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TOTOx日経デザインラボのコラムです。
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第41回 国際福祉機器展H.C.R.2014 会場の様子
第41回国際福祉機器展 H.C.R.2014 TOTOブース全景
第41回 国際福祉機器展H.C.R.2014 会場の様子
10月1日から3日まで、東京ビッグサイト(東京都江東区)で第41回国際福祉機器展 H.C.R.2014が開催されます。TOTOは、東2ホールのNo.2-12-04で約300㎡の展示会場を確保しました。白とブルーを基調とした清潔感あふれるデザインの空間で、住宅のバリアフリー・リモデルに適するトイレやユニットバスのほか、高齢者施設向けの幅広い水まわり商品を紹介。また、今回、初めてのTDYアライアンスでの3社合同出展として、大建工業、YKK APの商品も展示しています。
今年はH.C.R.開催初日、このTOTOの展示会場に、日経BP社のデザイン雑誌「日経デザイン」編集長の丸尾弘志氏が来場。デザインのエキスパートの視点から、新商品、話題の商品を実際に試しつつ、それぞれの特長や使い勝手をレポートすることになりました。
日経デザイン編集長
丸尾弘志氏
車いすでの出入りや介助の方々の動きを配慮
病院や高齢者施設向けの介護ユニットバス(XA)シリーズです。車いすを利用したり、介助を伴う状態でも、浴槽に入りやすいように配慮されています。介助者の負担が軽減されるよう、介助される方の状態に合わせてサポートできるトランスファーボード(ベンチタイプ、フックタイプ)も用意。浴槽の3方向の縁に掘り込み(リム)を設けてあり、ぐっと握れるので介助する側もされる側も安心です。「浴槽の底面と洗い場の床が同じ高さなので、浴槽に片足を入れても安定した状態で 立っていられますね。転倒の危険が大幅に減るのでは」
左/介護ユニットバスの全景 右/浴槽の出入りを確認する
自由に場所を動かせる、ウォシュレット付き居室用水洗トイレ
寝室などのベッドサイドに後付けできる、ウォシュレット付き水洗トイレです。床に固定しないので、自由に場所を動かせるのが特長。便器の背後にある粉砕圧送ユニットで固形物を粉砕し、壁に接続した排水管から流し出す仕組みです。トイレへの移動距離が短く、家族に排泄物を見られずに済むので、介護される方の心理的・身体的負担が軽減されます。会場には、粉砕圧送ユニット内の構造や動きがよく分かるスケルトン仕様を展示しました。「便器から汚物を送り出すパイプの口径が20mmと細いので、室内に露出していても邪魔にならないですね」
左/ベッドサイド水洗トイレ。vol.25の開発者インタビューも必見 右/給水ホースを確認し細さに驚く
使いやすさとデザイン性を追求したはね上げ式ひじ掛け
アームレスト(左)の使い勝手とデザイン性の高さを両立したひじ掛け。座っているときにはリラックスした姿勢が保て、立ち座りもらく。なだらかな曲線や爽やかな白は、これまでの福祉機器のイメージとは異なり、インテリアになじむおしゃれな印象です。アームレストもはね上げ手すり(右)も使わないときは壁面に跳ね上げられ、掃除のときなどに邪魔になりません。「手すりの先端部の曲線などディテールが便器本体と丁寧にそろえてあるので、トイレ全体の一体感もあり、すっきりとした印象になりますね」
左/「アームレスト」(左)「はね上げ手すり」(右)を便器の両側に展示。使い勝手を比較検討しやすい。アームレストの開発者インタビューはvol.24に 右/アームレストを試す丸尾編集長
前傾姿勢をサポートし排泄をらくにする手すり
便器に座ったときちょうど目の前に固定でき、排泄時の前傾姿勢をサポートする手すり、前方ボード(スイングタイプ)。前傾姿勢でもたれ掛かるとお腹に力を入れられ、排泄しやすくなります。ボードの材質はクッション性があるうえ平らな形状なので、もたれ掛かっても腕を置いても安定感があります。「ボードが見た目より柔らかくて驚きました。これなら安心して身を預けられるのでは。金物もうまく隠してありますね」
左/前方ボード(スイングタイプ)を便器の前にセットした様子
右/前方ボードの感触、もたれかかったときの力の入り方を実感
レールの凹凸をなくした出入りしやすい掃出し窓
窓枠の存在感を極力抑えたシンプルなフレームで「眺望」に優れた明るい大空間を実現、さらに、複層ガラスで「省エネ」配慮、車いすでも「通行」しやすいフラット下枠に3枚建の引違い窓です。サポートハンドルやサポート引手で窓の開閉もらくらく。
光と風を全身で感じるテラス窓が、快適な住まいづくりを叶えます。「この窓のレールはまったく段差を感じないですね。重めのペアガラスなのに開閉も 楽。ちょっとしたストレスがひとつずつ解消されている印象があります」
左/居室に大開口テラス窓を組み合わせた提案
右/車いすを操作し下枠のレールの凹凸を確かめる
引き戸と開き戸を融合したドア
トイレを大開口に改修可能
車いす使用に対応したトイレ空間の創造を目指して開発された商品。3枚連動の引き戸と開き戸の要素を組み合わせた新たな機構のドアで、従来のトイレ空間の広さはそのままに開口幅を確保することが可能です。工事範囲や費用を抑えながら、車いすでの入室や介助しやすい空間にリモデルできます。「狭いトイレを広く使う。デザインのアイデアで暮らしが改善されるという、いい例 ですね」
左/ひきドアを通路側から見た様子。
右/「まず、3枚の戸を引いて揃えてから、普通のドアのように開けるんですね」
ユニークなイベントでバリアフリーを学ぶ
来場者への○×クイズの様子。ナレーターが投げ掛ける、TOTO商品の特徴についての質問に会場が沸きました。
高齢者施設の職員に扮した役者さんが会場を巡りながら、介護ユニットバスやひきドアなどについて説明していきます。
TOTOのバリアフリーブックは今年、発刊40周年に
TOTOでは1974年から、快適なバリアフリー空間の設備とプランを提案する冊子(発刊時の名称は「身体障害者のための設備の器具」)をつくり続けています。内容は、パブリックトイレの計画や設計、施工・管理などに携わるプロ向けに、車いす使用者の方のトイレ内での行動を説明し、使いやすいトイレプランを提案するもの。2001年以降の「バリアフリーブック パブリックトイレ編」では車いす使用者のほか乳幼児連れ、妊婦、オストメイトの方などを対象に一層幅広い使用シーンを配慮した多機能トイレの提案が盛り込まれています。バリアフリーブックは約40年の長きに渡って好評を得ており、今後も時代の流れに柔軟に対応しながら発行を続ける予定です。
写真/鈴木愛子 取材・文/渡辺圭彦 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2014年10月1日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。