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vol.51 座談会企画 すべての人が安心して使えるパブリックトイレとは? 性的マイノリティ−LGBT−座談会

TOTO汐留ビルディング オフィスにて

vol.51 座談会企画すべての人が安心して使えるパブリックトイレとは?性的マイノリティ−LGBT−座談会

TOTO汐留ビルディング オフィスにて

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー−LGBT−をはじめとした幅広い性的マイノリティの方々は
それぞれ、パブリックトイレに関する困りごとを抱えているといいます。
ここ数年TOTOは、課題のひとつとして、多様な性を想定しさまざまなセクシュアリティをもつ方々が
どのようなトイレを求めているか、調査や議論を重ねてきました。
その解決策をともに求め続けることは、すべての人が安心・快適に使えるトイレをあらためて考えることにつながるでしょう。
そこで当サイトでは、LGBTを支えるNPO法人ReBitの皆さんに協力いただき、
パブリックトイレに関する座談会を開催。vol51、52の2回に渡ってその様子をご紹介します。

男女に限らない、多様なセクシュアリティの存在

男女に限らない、多様なセクシュアリティの存在

―――まずは、自己紹介をお願いします。

やくしさん私は、NPO法人ReBitの代表をしています。28歳のトランスジェンダー男性で、からだの性は女性、戸籍上は女性です。男性ホルモンを定期的に投与しているので、身体には声が低い、髭が生えるなど男性的な部分がありますね。好きになる性別は男性も女性も、それ以外の性別の方も対象です。

きょうへいさんNPO法人ReBitで就活事業部マネージャーをしております。25歳です。女性として生まれ、今は男性として暮らしているトランスジェンダー男性です。好きになる性は、男性、女性の両方であるバイセクシュアルです。約3年ホルモン投与を続けていて、乳房の切除手術も受け、身体の性別を少しずつ、男性に近づけています。

ゆきさん27歳で学生です。一度大学に進学してから、休学して3年ほど仕事をしていました。今は教員を目指して、学んでいます。男児として生まれ、20歳のときに性同一性障害の診断を受けました。タイで性別適合手術をし、現在の戸籍上の性別は女性です。2017年の夏に入籍しまして、夫と暮らしています。

ゆずまさん大学3年生の21歳です。からだの性は男性ですが、こころの性は男性でも女性でもなく中性的でありたいと思っているので、トランスジェンダーのうちのXジェンダーだと自認しています。好きになる性については、かっこいいと感じるのは男性が多いものの、それが恋愛感情かどうかははっきりとはわからないですね。

そうしさん23歳、都内の大学に通う大学4年生です。セクシュアリティは、男性として男性が好きになるゲイです。

えりこさん28歳で、NPO法人ReBitの事務局マネージャーを担当しています。女性として生まれて、こころの性も女性。男性・女性どちらも恋愛対象になるバイセクシュアルです。3年前に、男性に戸籍を変更したトランスジェンダー男性と入籍しました。

(以下、敬称略)

LGBTの分類について

文中では、出生時のからだの性が女性、こころの性が男性の人を「トランスジェンダー男性」、出生時のからだの性が男性で、こころの性が女性の人を「トランスジェンダー女性」とした。ゆずまさんが自認するXジェンダーも、トランスジェンダーに含まれる

おたずねボード

今回の座談会で用意した「おたずねボード」。それぞれのセクシュアリティの詳細を示す

からだの性とこころの性の違和感が生む、パブリックトイレの悩み

からだの性とこころの性の違和感が生む、パブリックトイレの悩み

―――それでは、皆さんのパブリックトイレに関する困りごとを教えていただけますか?

きょうへい:
今は男性トイレを使っています。しかし、男性ホルモン投与を始める前や、始めてから一年くらいの間は、男性とも女性ともとらえられるような見た目だったこともあり、どっちのトイレを使ったらいいんだろうと悩みました。どっちに入っても「えっ?」と振り返られたんです。駅のトイレで並んでいるときは、どちらに入っても「こいつどっちだ?」という視線を感じて戸惑いました。最終的に、どうしても使いたいときは、男女関係なく使える「だれでもトイレ」(※1)を使うようにしました。ただし、トイレから出たときに車いすの方が待っていたりすると、申し訳なく思いましたね。意識しすぎて、トイレを使おうとするたびに辛くなる時期もありました。 (※1)「だれでもトイレ」とは多機能トイレなどの男女共用トイレを指す
座談会の様子1

Xジェンダーのゆずまさん(右から2番目)は、「男性トイレ、女性トイレのどちらにも違和感があるので、使うのはほとんど『だれでもトイレ』です」と話す

―――ホルモン投与以前、女性トイレを使っていた頃は、違和感はありませんでしたか?

きょうへい:
見た目も戸籍も女性だったので、周囲の視線に戸惑うことはありませんでした。とはいえ、性自認が男性なので、私にとっては異性である女性のトイレに入るのはやはり気まずいというか、不安で汗をかいてしまう場面も多かったです。

―――男性ホルモン投与を始めてからは?

きょうへい:
しばらくの間は、入れませんでした。男性ホルモンの投与により、髭が生えるなど、見た目の性別も男性に近づいていくのですが、「自分は今、周りから不自然に思われないほど男性的な容姿をしているんだろうか」と不安に思うこともありました。なお、大学時代には、カミングアウトをしている人とカミングアウトしていない人の双方がいました。カミングアウトをしている友人に女性トイレで会うと驚かれる、カミングアウトをしていない友人に男性トイレで会うと驚かれるという状況です。ですから、できるだけ知り合いに会わないように、3階で授業があったときは5階のトイレを使ったり、学外のドラッグストアまで行ったりしていました。
座談会の様子2

「ホルモン投与を始めてからもしばらくは、男性トイレに入れなかった」というきょうへいさん

やくし:
私も、きょうへいさんが話してくれたことと似た経験が多いですね。カミングアウトしている相手、していない相手が混在している状況ですと、「知り合いがいたらどうしよう」という心配のほうが大きくなってしまうんですよね。地元では特に、男女共用トイレじゃないと入りづらかった。コンビニやファストフードチェーンなどのトイレは男女共用が多いので、よく行っていました。当時は、よく訪れるまちの中の男女兼用トイレのマップが頭の中にインプットされてしまうくらい、トイレのことを気にして生活していましたね。 現在は仕事柄、男性用スーツで生活していることもあり、男性と見られることが多いのですが、大学生の頃は、人によっては私のことを男性と認識したり、人によってはボーイッシュな女性と認識したり、と揺らぎがありました。男性トイレに入ってもちらちら見られたり、一方で女性トイレに入っても「ここは女性トイレです」と注意を受けてしまい、出ていったり・・・。相手から自分がどう見られているかに左右されるわけですから、男女別のトイレのどちらにも入りづらい時期は短くありません。 また、男性ホルモンを投与する前は、生理のときにはかなり困りました。男性トイレには、チャームボックスが置いてないんです。ビニール袋にナプキンを包んで、バッグに入れて持ち帰るしかありませんでした。
座談会の様子3

「男女共用トイレのあるファーストフードチェーンを把握している」とやくしさん

きょうへい:
ああ、それは悩みの種でした。
やくし:
男性の連れションの文化で困る人もいると聞きます。例えば、トランスジェンダーであることをカミングアウトせずに、男性として職場や学校で生活をしている場合、一緒にトイレに行くたびに個室に入ると不思議に思われてしまう。「バレるかもしれない」という不安から、小便器の前で立ちションするふりをするという人もいると聞きます。全部が個室だったらいいのに、と思うこともありますね。
そうし:
音の問題はどうでしょう。個室で小便をする男性は多くないし、男性とは音の出方が違うから気になる、という話をよく聞くのですが。
きょうへい:
それはありますね。トイレットペーパーを勢いよく引き出して、ガラガラッと音を立ててごまかしたり、何度も水を流したりしてごまかしていました。
やくし:
音でいうと、生理用品の包装を開けるときに、ペリペリという音が響くんですよね。あれがとても気まずい。「一体何の音なんだ」と思われる。 それともうひとつ。男性トイレは個室が少ないうえに、汚れていることが多いんです。そうなると、10分並んでやっと入ったのに、結局、別の階に足を延ばして、ただ用を足すだけで20分経ってしまったということもあります。特に職場などですと、仕事に影響が出てしまい心苦しい思いが募りました。

座談会の様子4

男女とも使える「だれでもトイレ」には遠慮も

―――「だれでもトイレ」は個室ですし、生理用品を捨てるチャームボックスも用意されています。

やくし:
きょうへいさんと同じく、車いすの方やお子さま連れの方が並んでいると申し訳なくて、後ろめたい気持ちになることもあります。また、「だれでもトイレ」は数が少ないので、別のフロアや別の建物などわざわざ遠くまで行かなくてはならないこともあります。また、周囲にカミングアウトをしていない人の中には、すぐ近くにある男女別トイレではなく遠くにある「だれでもトイレ」に行くと、周囲の人が疑問に思うのではと心配する人もいます。
ゆき:
私は高校生のころ、自宅のトイレしか使いたくなくて、なるべく水を飲まないようにしていました。そのころは、もう容姿は女性と見られることがほとんどだったので、男性トイレには入れなかったんです。とはいえ、戸籍上は男性なので、女性トイレに入ったらバッシングされるのではないか、と不安でこちらにも入れませんでした。自己防衛のためにも、外ではトイレに入らない方が賢明だな、と。 また、性別適合手術をしていないトランスジェンダー女性は、からだの性は男性であっても、立って小用を足すことに精神的苦痛を感じる方が多いんです。 男性トイレの小便器のレイアウトも、トイレに入りづらい一因です。壁に向かって、横にずらりと並んで小用をしますよね。隣の人と近すぎて、子どもの頃から違和感がありました。なぜあんなにオープンなのでしょうね。
座談会の様子5

「安心して使えるトイレを探すために時間がかかってしまう」というきょうへいさんの話に一同共感

ゆずま:
自分は男性も女性も異性に感じるので、男女どちらのトイレを選んでも違和感があります。だから主に使うのは「だれでもトイレ」。やくしさんと同じように、よく行くまちの誰でもトイレマップが脳内にあります。 からだの性が男性なので、本当にどうしようもないときは男性トイレに入りますが、自分にとっては異性である男性とすれ違うのが嫌ですね。ヘッドホンをして誰とも目を合わせずに個室に入り、誰もいないタイミングで外に出ます。
やくし:
トランスジェンダー男性やトランスジェンダー女性は望む性別のトイレを使えないといった問題を抱えていますが、Xジェンダーなど、こころの性が男女のどちらかに二分しない方は、特に困る場面が多いと思います。ゆずまさんのようにそもそも男女で分かれたトイレが使いづらいという人もいる。また、それは、一定期間ではなく一生つきあっていかなければいけない問題であるわけです。
座談会の様子6

ゆずまさんは、男子トイレに入るときは必ず個室を使用している

―――そうしさん、えりこさんはいかがですか?

そうし:
自分は中学校、高校のころから、好きになる相手は男性でした。周囲にもそのことを知っている人もいたので、連れションのときには「あいつ(そうし)は、恋愛対象として俺たちのこと見てる」と思われるんじゃないか、という恐怖がありました。実際は全くそんな気持ちはないのですが。 だから、ずっと個室を使っていたんですが、そうすると「あいつ、どうしていつも個室なの」と思われるに違いない。ですから、授業中にわざわざ「お腹が痛い」と手を挙げてトイレに行くようにしていました。自分は、駅のトイレなど知らない人ばかりの環境では何の問題も感じません。気になるのは学校など知り合いが多い場所。特に、小便器の前で、隣の人とコミュニケーションが発生するときです。付き合いが長い人となら大丈夫ですが、カミングアウトしてすぐの相手がいると、「どう思われているんだろう」と少し気まずいですね。だから小便器と小便器の間にパーテーションのあるトイレのほうが使いやすい。新しい商業施設にはパーテーションのあるトイレが多いんですよね。
座談会の様子7

そうしさんは、「カミングアウトしてすぐの知り合いとトイレで一緒になるのは、気まずいことも」と話す

えりこ:
私自身は女性トイレを使っていて、トイレに困ったことはありません。 ただ、こんな経験があります。以前お付き合いしていた、見た目がボーイッシュな女性のパートナーとトイレに入ったときに、年配の方から、「どうして男性を連れてくるの?」と言われたことがあります。彼女はからだの性もこころの性も女性ですから、傷ついていたし、私もどうフォローしたらたらいいのか悩みました。
座談会の様子8

「本当は、安全・快適に使えれば、どのトイレを使ってもいいのでは」とえりこさん

―――ほかに、トイレの困りごとについて、お考えがあればぜひお聞かせください。

やくし:
2点あります。ひとつは、「男女で入り口が分かれていて、中に入ると個々の空間は仕切られていない」というような、今まで一般的と思われてきたトイレの構造で困っている人は、LGBTに限らずいらっしゃること。「同じ空間で並んで小用を足す」という男性トイレの構造に戸惑いを感じている人は、LGBT以外にも少なからずいるのではないでしょうか。トイレで同僚に会うと気まずい思いをしたり、男性が個室トイレに入りづらかったり。 だからこそ、誰もが使いやすいトイレのあり方を考えるときに、「LGBTも使いやすいトイレ」ではなく、男女で二分すると使用しづらい方がいることを念頭において議論するのは大切だと思います。 もうひとつは、ゆきさんが少し触れましたが、トランスジェンダー女性の女性トイレの利用と犯罪を関連づけて考える人がいらっしゃること。これは、別の課題として、分けて議論する必要があると考えています。 たとえば、「トランスジェンダー女性が女性トイレを使えるようにすると、盗撮などの犯罪をするのでは」などとご意見をいただいたことがあります。しかし、セクシュアリティと盗撮などの犯罪行動に関連性はありません。 戸籍や生まれたときのからだの性別が男性だというだけで犯罪に結びつけられてしまうのは、大きな問題です。トランスジェンダーの人もそうでない人も、同様に安心・安全に使用できるトイレ空間について、議論を進める重要性をひしひしと感じます。
ゆき:
本当に、「分けて議論すること」は必要だと思います。 高校生のとき、男性トイレで酔っぱらったおじさんに絡まれた経験があります。男子学生服を着ていたのですが、男装した女性だと思われたのでしょうね。
「女が男性トイレに入っていいと思っているのか」と。
迷惑行為をする人に非があるのに、なぜか、そこに入ったトランスジェンダー女性あるいはトランスジェンダー男性のほうの問題にされがちな気がします。
被害に遭ったお話はなかなか表に出ません。こういった問題をもっと多くの人に認識してもらいたいとずっと思っていました。
座談会の様子9

「ずらりと並んでいる小便器で、隣と至近距離で用を足すのは抵抗がある人は、LGBTに限らない」とやくしさん

―――みなさん、話しづらい経験を打ち明けていただき、ありがとうございました。
続けて、より多くの人が使いやすいパブリックトイレについて一緒に考えていきたいと思います。

※当記事の内容は、あくまでも座談会に参加いただいた皆様のご意見です。

NPO法人ReBit LGBTを含めたすべての子どもがありのままの自分で大人になれる社会を目指すNPO法人。学校・教育委員会・自治体で生徒・教職員向けに出張授業や研修を行う「LGBT教育」、年齢・セクシュアリティ不問の成人式「LGBT成人式」、LGBTの就活支援や企業への就活に関する研修を行う。

編集後記座談会に参加いただいた皆さんの率直な発言に触れ、性的マイノリティの幅広さと、それぞれのパブリックトイレにまつわる悩みの多様さを実感しました。今回の記事を読んで、認識を新たにされた方々も多いのではないでしょうか。実は、身体のコンディションはもちろん、パブリックトイレの使い心地は、性的マイノリティに限らず、すべての人が異なっているでしょう。これまでの常識からいったん離れ、多くの人が快適に使えるトイレのあり方や、使い方のマナーについて議論をするときがきたようです。日経デザインラボ 介川 亜紀

写真/鈴木愛子 取材・文/飛田恵美子 構成/介川亜紀 監修/日経デザインラボ 2018年2月26日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。


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次回予告
vol.52は、「すべての人が安心して使えるパブリックトイレとは?性的マイノリティ−LGBT−座談会 後編」です。
2018年4月初旬公開予定。

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