ホッとワクワク+(プラス)

ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)

TOTOx日経デザインラボのコラムです。

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今年のTOTOブースの様子

今年のTOTOブースの様子

今年のTOTOブースの様子

第44回 国際福祉機器展 H.C.R.2017 車いすテニスプレーヤー、二條実穂さんがTOTO商品をレポート

9月27日から29日まで、東京ビッグサイト(東京都江東区)で第44回国際福祉機器展 H.C.R.2017開催。TOTOは今年もDAIKEN、YKK APとともに東6ホールの約250m²の展示ブースを確保しました。高齢者の介護のほかさまざまなハンディをもつ人たちの利用を配慮した商品を展示し、来場者がひとつひとつ、じっくりとチェックしながら巡ることができるようにしています。
今年はこのTOTOの展示ブースに、車いすテニスプレーヤーの二條実穂さんがご来場。展示しているトイレやパブリック向けのトイレブース、洗面台などの商品を実際に試して、車いすを利用する人の視点から、使い勝手や使い心地などを率直に語っていただきました。

ポートレート 車いすテニスプレーヤー
二條実穂さん

TOTOブース図面

二條実穂(にじょうみほ)さん

1980年生まれ、北海道出身。シグマクシス所属。女性の視点から見た家づくりが夢で、大工職に就く。棟梁として働いていた2003年に建築現場の足場から転落し脊髄を損傷、車いす生活に。現在は数多くの世界大会に出場するプロの車いすテニスプレーヤーとして活動中。2016年リオデジャネイロパラリンピックに出場し、ダブルスで4位入賞(写真提供:シグマクシス)

ベッドサイド水洗トイレ

ひとりでもラクに動かせる、後付け可能な水洗トイレ

ひとりでもラクに動かせる、後付け可能な水洗トイレ

好評のベッドサイド水洗トイレは、10月に発売予定の最新型をご紹介。ベッドのそばに設置できるにもかかわらず、機能は通常の水洗トイレとほぼ変わりありません。汚物は便器の背後にある圧送ユニットで粉砕してから20ミリのホースで送り出し、壁に接続した排水管から排出する仕組み。従来品より奥行きが約13センチ短くなり、約16キロ軽くなったうえ後部にキャスターがついたので、ひとりでもぐんと移動しやすくなりました。

「ポータブルトイレとは違い、水洗でウォシュレット付きなど普通のトイレと同じ機能を備えていること、においが出ない設計になっていることに驚きました。現在の私にはまだ必要ありませんが、車いすユーザーにしろご年配の方にしろ、“トイレを自分ひとりで済ませることができるかどうか”は気持ちを大きく左右するものだと思います。将来、高齢になってさまざまな心配が出てきたときは使いたいですね」

ベッドサイド水洗トイレ。一般的なトイレと比べ小規模な工事で取り付け可能
アームレスト(手すり)をはね上げられ、車いすからも移乗しやすい
ベッドのすぐそばに置けるので、歩行に不安のある人も転倒せず自力で移乗できる
最新型は小型で軽量、キャスターつきになった。ひとりでも移動がスムーズ

コンパクト多機能トイレパック

車いすでの利用もラクラク、コンパクトなパブリックトイレ

車いすでの利用もラクラク、コンパクトなパブリックトイレ

公共施設や商業施設などにある、腰掛便器と洗面化粧台、オストメイト対応の汚物流しなどがひとつにまとめられ、車いすでも介助の方と一緒でも利用できる多機能トイレ。こうした多機能トイレは少なくとも2.0×2.0メートルのスペースが必要と言われていましたが、このコンパクト多機能トイレパックは小規模施設での普及を目指し1.8×1.9メートルへの省スペース化を実現。各設備の形状やレイアウトを工夫するなどして、室内側への凸凹を押さえたので、車いすでの移動や回転もスムーズです。

「コンパクトということですが、私にとっては充分な広さです。便器の前側が斜めになっていてその部分に足を入れられるので、車いすから移乗しやすいですね。この位の広さでも問題ないという車いすユーザーは多いのではないでしょうか。また、手すりの濃い色調は弱視の方でも認識しやすいのではと思いました」

車いすでのアプローチに配慮しつつ、必要な器具などがすっきり収まるコンパクト設計を実現
車いすで切り返しできる空間を確保。便器は壁掛け式で足元に空間があり、移乗もしやすくなっている
洗面台下の足元に空間があり、車いすや足が当たらないためスムーズに手を洗える
給排水管を収めるライニングは棚として利用可能。車いすユーザーも荷物を置きやすい高さに設計している

車いす対応洗面コーナータイプ

コーナー用の洗面台。狭い居室もすっきり広々使える

コーナー用の洗面台。狭い居室もすっきり広々使える

座った状態でひざ下がすっぽりと収まり、車いす利用者が使いやすい洗面台です。これはそのシリーズのコーナー専用タイプ。病院や施設の個室など限られた空間で、デッドスペースを有効に活用できるよう考えられたものです。洗面台の前側(アプローチ間口)は約1.5メートル確保しており、車いすの脇に介助者が立って、身づくろいをサポートすることも可能です。また、ベッドなどを効率的にレイアウトできるので、部屋をゆったりと使えるメリットも。

「洗面台の両脇が斜めになっているので車いすでアプローチしやすいですね。このおかげで、ベッドから洗面台への動線も短くて済むのではないでしょうか。洗面台のボウルも手前がサイドより低くなっていて使いやすそう。普通の洗面台だと肘を少し上にあげるので大変ですし、水が伝って腕が濡れてしまいます。これは車いすユーザーが手や顔を洗いやすいように、しっかり考えて設計されていると感じました」

コーナー部に設置し空間を有効活用。鋭い角がないため身体をぶつける心配もない
狭い室内でも車いすでアプローチしやすく使いやすいように、間口を広く確保した
洗面台下の空間を広く取っているので車いすを奥まで入れることができる。「手が洗いやすいですね」と二條さん
車いすの両側に介助者が入るスペースをとるなど介助しやすさにも配慮した

車いすでも介助者が一緒でも巡りやすいブースの設計

車いすでも介助者が一緒でも巡りやすいブースの設計

上り下りしやすい緩やかなスロープ「傾斜がとても緩やかなので、負荷をかけずに上り下りできますね。幅も広いので、車いすが2台すれ違っても余裕があるのではないでしょうか。これなら多くの方が行き交う会場でも安心して行き来できます」
見やすくわかりやすいパネル展示「文字が大きく、目線も低めで見やすいですね。こうした人の多い場所では、ブースに近づくのも苦労するもの。ブースの間仕切りが少ないので、少し離れたところからでも説明を読むことができ、商品の概要がよくわかるので助かりました」
未来に向け、多機能トイレをもっと増やしたい

2020年に向け、多機能トイレをもっと増やしたい

試合で世界各地へ遠征しますが、日本のトイレは機能性の面でも清潔さの面でも世界一だと感じます。ただ、普段、日本で生活していて気になっているのが、車いすユーザーが使えるトイレの数が足りていないことです。そのために、残念ながら使用中で困ることも少なくありません。従来の多機能トイレの広さでは小さな施設では導入しにくかったと思いますが、コンパクト多機能トイレパックなら設置が可能な場所はもっと増えるのではないでしょうか。今後、たくさんの車いすユーザーの方が日本にいらっしゃるはずです。それまでに、多くの方にとって使いやすいトイレが増えてほしいと願っています。


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写真/*KEICO PHOTOGRAPHY(特記以外) 取材・文/飛田恵美子 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザインラボ 2017年9月29日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。

次回予告
vol.50は、2017年11月下旬公開予定。

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