ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)
TOTOx日経デザインラボのコラムです。
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Before
写真は、以前のリビングダイニングからキッチン、廊下、和室を眺めたところ。部屋が細かく仕切られ、家具が置きにくいなど使いづらい状況がうかがえる。左の入り口は和室だが、窓がなく、採光はもちろん通風も不十分だった。
vol.05とvol.06では、リタイア後に、お住まいのマンション住戸を全面リモデルした事例を紹介します。次男とのふたり暮らしのため、3LDK・延床面積76㎡の間取りを、広々とした1LDKに変更しました。このような大胆なリモデルに伴い、キッチンやトイレなどの住宅設備機器の交換、生活動線の見直しだけでなく、これまで悩みの種だった通風や採光といった性能も改善することができました。また、間取りや各部屋のレイアウトは、今後の身体状況の変化を見越し、介助の場合や車いすを使用した場合もスムーズに生活できるように工夫しています。動きやすいシンプルな間取りに徹しながら、壁材や照明をアクセントに使い、住まい手のイメージに合う和洋折衷のインテリアに仕上げました。
vol.05では、このお住まいの間取りと動線にフィーチャーします。
では、それぞれの工夫と、心地よさをご覧ください。
段差がないので、歩行も掃除もラク。左側に見える腰壁付近がベッドコーナー
日々の生活もおもてなしも
リビングダイニングで
リビングダイニングは、住戸の約3/4を占める広さ。キッチンやベッドコーナーを融合させたので、生活シーンのほとんどをこの場で賄えます。つくり付けのAVボードの引き出しは、使用頻度を優先して、趣味の着物や和装小物専用にデザインしました。以前、TVボード側にあった2部屋の和室を取り壊したため、窓からの日差しと風が住戸内に行き渡るようになりました。また、空間に余裕があるので、今後は、車いすでの使用も可能です。
左/畳ベッドを目隠しする腰高の壁は移動可能、かつインテリアに溶け込む
右/リビングダイニングで床座したときには、ベッドコーナーの中は見えない
リビングダイニングの一角に
ベッドコーナーを
寝室は別にせず、リビングダイニングの一角に手持ちの畳ベッドを生かした、ベッドコーナーを設けました。部屋間での移動が少なくなり、また、周囲の空間に余裕があるので、現在の生活はもちろん、万が一、介助を受ける場合でも無理がありません。ベッドコーナーを囲む壁は、来客の視線からコーナーを隠してくれると同時に、通風や採光を妨げないよう、腰ほどの高さにしています。立ち上がるときの手すりとしても、ちょうどよい高さです。
左/玄関から室内を見たところ。右はリビングダイニング、左はキッチン方向
右/動線を配慮して、造作のテーブルにR形状の曲線を取り入れた
すべての部屋をつなぐ
回遊式の動線
リモデル後は、玄関からリビングダイニング、キッチン、洗面所、トイレなどのほぼ全室が回遊式の動線でつながり、目的の場所への移動がラクになりました。玄関からリビングダイニングとキッチンのそれぞれに直行できるほか、各水まわり設備を近くに設けるなど、家事の時間が短縮できるよう、レイアウトが工夫されています。また、この動線には、住戸内に風を行き渡らせるメリットもあります。
家族構成/母+次男
築年数(リモデル完成時)/30年
リモデル工期/30日
リモデル面積/76㎡
リモデル費用/約570万円
設計・施工/(有)一・番家工務店
当物件は、「リモデル.jp」でもご覧いただけます。
構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2012年9月21日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。