ホッとワクワク+(プラス)

ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)

TOTOx日経デザインラボのコラムです。

ホッとワクワク+(プラス)

vol.20Vol.20
新しい形の二世帯住宅 つかず離れず暮らす住まい・ 各世帯編 東京都 I&F邸新しい形の二世帯住宅つかず離れず暮らす住まい・ 各世帯編東京都 I&F邸

家族が揃うリビング

心身ともに心地よく暮らせる工夫=ユニバーサルデザインとすれば、親世帯と子世帯が互いに支え合って暮らせる二世帯住宅も含まれると考えていいのではないでしょうか。そこで、vol.19とvol.20では、親世帯のIさん家族と長女世帯のFさん家族が暮らす二世帯住宅を紹介します。この住まいは、家族全員がそれぞれを見守りながら、先々まで心地よく暮らしていけるアイデアに満ちています。
2世帯住宅とはいっても、建物はいわば、半同居といった間取り。住宅は2棟の建物から成り、一部はつながっていて交流できるものの、基本的にはそれぞれの棟に各世帯の住居があります。親子とはいえ生活パターンもインテリアの好みも異なるため、自分の好きなようにプランの決められる半同居の間取りに、IさんもFさんも賛同したそう。また、設計を担当したスタジオ・サイ(CY)の建築家、堀内雪さんは、それぞれの世帯の年齢に見合う暮らしやすさ-ユニバーサルデザイン-を盛り込んでいます。
vol.20では、各世帯の現在の暮らし方や、今後の身体の変化を見越したユニバーサルデザインにスポットを当てます。

図面

DATA
構造/在来木造
築年数/約7年
敷地面積/185m²
建築面積/103m²
床面積/1階95m²、2階93m²、3階64m²
合計 252m²
設計/堀内雪(スタジオCY)
施工/高政工務店

謡の稽古場

上/謡の稽古場。床はヒノキ、天井はスギ板張りで純和風。8畳の板の間と6畳の琉球畳のスペースがあり、ベッドを置くには十分な広さ。障子を開けると中庭に面した掃出し窓
下左/親世帯の玄関は稽古場に隣接。双方のドアを開けると介助つきでも余裕を持って出入り可能
下右/子世帯の玄関は約6畳。来客が気軽に立ち寄れるようにティールームを兼ねる

親世帯1階にある謡(うたい)の稽古場は、訪問ケアを受けやすい寝室への転用も

親世帯1階にある謡(うたい)の稽古場は、訪問ケアを受けやすい寝室への転用も

お互いの生活パターンを尊重するため、親世帯と子世帯は玄関も別々。親世帯の棟の1階にはお父様の謡の稽古場を設けましたが、お弟子さんが頻繁に訪れる日も、子世帯の出入りや来客に影響はありません。一方、親世帯の1階は将来介助が必要になったり、訪問ケアを受ける可能性も考えプランニングしています。実は、謡の稽古場は、寝室に転用することも想定して1階に持ってきました。そのほか、稽古場では中庭からも直接出入りできるように掃出し窓を設けたり、玄関ドアを間口の広い観音開きにしたり、介助の有無に関わらずスムーズに入浴ができるよう、浴室を稽古場の近くに設けています。

洗面所、トイレ、浴室 バルコニーから室内 リビングからキッチン 寝室をつなぐ出入口 シャワールーム

上/バルコニーから室内方向を見る。右側がワークルーム、左側が浴室
下左/キッチンから入り、洗面所、トイレ、浴室の順に巡る
下右/リビングからキッチン方向を見る。左に行くとワークルーム、右に行くと洗面所がある

子世帯は、子どもたちが駆け回れる回遊動線と段差のない床を確保

子世帯は、子どもたちが駆け回れる回遊動線と段差のない床を確保

子世帯の主な居室である3階は、子どもたちが伸び伸びと動き回れるように、全部屋を回遊動線でつないでいます。各部屋の出入り口を開け放つと、キッチン付近からワークルーム、バルコニー、浴室、トイレ、洗面所と、ぐるりと巡ることができます。各部屋の出入り口付近の段差は極力なくしたので、友達と一緒に駆け回ったりしていても、つまづく心配がありません。また、このようにバルコニーを含んだ回遊動線をもうけると、通風を得やすくなり、室内を快適に保つ効果も期待できます。

対面キッチン

親世帯のキッチン上/子世帯のキッチン。おもてなし好きのFさんは、料理を用意しながらお客様との会話を楽しむ。白、グレー、木目を組み合わせたナチュラルな雰囲気
下/親世帯のキッチン。白い造り付け家具と濃茶のフローリングのコントラストが印象的

親世帯、子世帯それぞれが使いやすさを追求したキッチン

親世帯、子世帯それぞれが使いやすさを追求したキッチン

キッチンは毎日使うからこそ、好みの使い勝手やデザインは十人十色です。I&F邸では、一カ所を共用するのではなく、各世帯がそれぞれ使いやすいキッチンを自由にプランニングすることにしました。
親世帯はI字型の対面キッチン。お母様は調理中にシンクまわりをお客様に見せないように、カウンターのダイニング側に立ち上がりをつけました。また、室内を常にすっきり保ちたいと、壁面いっぱいに扉つきの棚を造り付けました。
一方、子世帯は、大型のアイランド型キッチンが主役。お客様と一緒に料理したり、食べたりする場として考えました。好みのデザインの調理道具や雑貨はしまいこまず、ディスプレイを兼ねてオープン棚に収納しています。2つのキッチンの表情が全く異なり、お互いの住まいで食事するのも楽しみになりそうです。

介護を受けたい場所は、約35%が「自宅」

高齢期を迎えても快適に暮らすには、I&F邸のように、家づくりを機に介護を受けやすいデザインを取り入れることが得策といえる。では、日常生活で介護が必要になった場合、高齢者はどこで介護を受けたいのだろうか?右の資料によれば、 最も多いのは「自宅」の 34.9%。次いで「病院などの医療機関に入院したい」、「介護老人福祉施設に入所したい」、「介護老人保健施設を利用したい」などの順になっている。 性別ごとでは、「自宅」の割合は,男性の方が女性よりも13%ほど高い。一方、「病院などの医療機関に入院したい」割合は、女性の方が男性よりも6.6%高い。

住宅や住環境に関する優先度 グラフ

お話をうかがった会社
スタジオCY(サイ)

建築家、堀内雪さんが主宰する設計事務所。筑波大学基礎工学類卒業後、毛綱毅曠建築事務所設計室長を経て独立。毎日の生活が楽しくなる空間づくりのお手伝いをしたい、という思いを基本に、住宅の設計、ライフスタイルのデザインを手がける。シンプルでナチュラル、開放的でありつつ、くつろげる居心地のよい住空間を生み出している。スタジオCY(サイ)


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写真/澤田聖司 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2014年3月20日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。

次回予告
vol.21は、「ユニバーサルデザインはこれからどう進化するか」をテーマに、 対談を繰り広げます。
2014年5月下旬公開予定。

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