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TOTOx日経デザインラボのコラムです。
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「ベッドサイド水洗トイレ」粉砕圧送ユニットと19ミリの柔らかいホースが居室へのトイレの設置を可能に
9月30日に発売される「ベッドサイド水洗トイレ」は、戸建住宅への後付けや高齢者施設に設置ができる、ウォシュレットつき水洗トイレです。介護を受けていらっしゃるなどトイレまで行くのが困難な方に向けて開発した、ベッドのそばに設置できる画期的な商品です。約30年間の研究・開発を経て、このたび商品化にこぎつけました。これまでは既存の住宅に大便器を設置する場合は大規模な改修工事が必要で、居室などに後付けすることは難しいとされてきましたが、当商品は壁に大きな穴を空けることなく比較的ローコストで設置できるんです。一カ所に固定しないので、必要に応じてある程度の移動もできます。不要になった場合は排水用のホースごと便器を壁から取り外せるので、通常の居室に戻せます。
居室に水洗トイレを置くことが可能になった理由は、新たに開発された「粉砕圧送ユニット」と、フレキシブルホースの採用にあります。仕組みを説明すると、まず、便や使用済みのトイレットペーパーは、トイレに内蔵の粉砕圧送ユニットで粉砕。その後、水とともに内径19ミリという細いフレキシブルホースを通じて送り出し、ホースを接続している壁までスムーズに排出します。このホースは細いうえ柔軟性が高く、都合のいい場所を這わせることができるので、トイレを好みの位置に置けるわけです。汚物は粉砕圧送ユニットで非常に細かく砕いているため、ホースが細くても詰まる心配はありません。
機器水栓事業部
主席研究員
松下 幸之助氏
また、今回の開発では、排水管の異物の詰まりを防ぐ工夫も大きな課題でした。高齢者や介助者が誤って流しがちなウェットティッシュや尿取りパッドは繊維が密で、粉砕は至難の業なのです。そこで私たちは、粉砕した汚物は外部に流し、異物は一旦ユニット内部に溜めるシステムを考案しました。異物が入っても即時に停止することがなく、また、異物が溜まりすぎた場合は、音声とLEDにより確認が可能です。異物は便器の後ろのパネルを開ければ、簡単に取り出すことができます。
この商品は2004年からテスト販売をスタートしておりまして、すでにお客様からいろいろな感想をいただいています。やはり、ベッドのそばに置けるので家族や介助者の手を借りずに用が足せて嬉しい、という高齢者の声は目立ちますね。使用後の臭いが残りにくく、居室でも気兼ねなく用が足せるという声も多い。私たちは、脱臭機能にも力を入れたんですよ。
実はこの「ベッドサイド水洗トイレ」、住宅だけでなく、幅広いロケーションで使える可能性を秘めています。災害時の避難場所での活用、各種イベントでの活用も考えられるでしょう。7年後に開催されるオリンピックの会場付近でも、活躍するかもしれませんね。
「ベッドサイド水洗トイレ」は受注生産品で、価格は554,400円(税込)から
ブースのほぼ中央に位置する展示で、来場者に熱心に説明する松下氏
「備えるリモデル」明日からも、そして高齢になっても快適なリモデルを提案
私たちが提案している「備えるリモデル」とは、身体の変化を見据えた住まいのリモデルのこと。たとえば60代といったまだまだ元気なうちに、現状の不満を解消するだけでなく、先々の高齢期にも安全、快適に過ごせるよう配慮し、自邸を全面的にリモデルするのが理想的と考えています。
どうして、早いうちに高齢者配慮のリモデルを済ませたほうがいいのか? なぜなら、健康で元気なときのほうが、リモデルに関する情報収集力が高く、プランニングのためにショールームをはしごしたり、粘り強く打ち合わせをするような行動力も持ち合わせていてご自身で納得いく暮らしを考えられるからです。また、リモデル工事のローンを組みやすいというメリットもあります。
マーケティング本部
技術主幹
日浅 雅見氏
弊社では、「備えるリモデル」にふさわしい商品やプランニングについて情報収集して分析・研究を行い、その結果をもとによりよい提案を導き出しています。研究の結果、商品化が決まったものも多数あるんですよ。たとえば、弊社とアライアンスを組んでいる建材メーカーの大建工業さんとのコラボで生まれた、2014年春発売予定の「トイレ用大開口ドア(仮)」。トイレ空間の長辺側の開口部を全開できる仕組み(vol.15を参照)なので、スムーズに車いすで出入りしたり、介助したりできます。こういった、高齢者向けの改修がしにくい箇所をフォローするような商品開発は非常に重要ですし、通常の引戸と違わない外観なので、元気なうちにリモデルしても違和感ないですね。
先進的な提案の「備えるリモデル」ですが、当初は、まだまだ元気なお客様に趣旨を説明しても実感を持っていただけないことが大きなハードルでした。しかし、「リモデルは頻繁にするものではないので、10年後、20年後も、今の家で快適に住み続けられるように配慮しませんか?」という一言を添えると、趣旨が伝わりやすいことが分かってきました。どなたでも加齢は避けられませんが、あまり考えたくないことかもしれません。しかし、ご家族の介護経験がある方のほうが、建替やリモデルの際に実際に高齢配慮を行っているというデータ(下のグラフ参照)には、その重要性が表れているのではないでしょうか。リモデルの際にはぜひ、現在も将来も快適・安心な住まいを考えていただきたいと思います。弊社としても、元気なときのリモデルでも違和感ないデザインであると同時に、実は高齢期にも配慮された機能を持つ商品をこれからも増やしていきます。
体調の変化を見越した高齢者リモデルの際は、手すりや段差の解消のほか、水まわりを優先。この箇所について介護経験者の方々の採用実数が圧倒的に多いことから重要性、必然性がわかる
今年の国際福祉機器展で展示した、「備えるリモデル」提案の一例
来場者に説明中の日浅氏。ベンチに一旦座り浴槽に入る動作を実演
写真/鈴木愛子 構成/介川亜紀 監修/日経デザイン 2013年9月30日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。