ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)
TOTOx日経デザインラボのコラムです。
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vol.13とvol.14でご紹介するのは、60代女性が主役のヴィンテージ・マンションのリモデル事例。約130m²をゆったりと仕切り、品の良いシックな色調でコーディネートしたお住まいは、大人の女性の余裕と知性を感じさせます。出版社で編集者として多忙な日々を過ごした後の、第二の人生を楽しむステージにふさわしい空間です。
設計を依頼したラブアーキテクチャーの建築家、浅利幸男さんに当初希望したのは2点。「ただ広いだけでなくくつろげること」「日々の掃除がしやすいこと」でした。 浅利さんは、Aさんが今後長らく心地よく住まうために、そういった希望も念頭に置きつつ、機能的および精神的なユニバーサルデザインの両立を心掛けてプランニングに取り組んだと言います。「どの住まいでも機能性の追及は当然のこと。設計で目指すべきは美しさです」。
Vol.14で紹介する水まわりにもその方向性は貫かれています。常に清潔感を保てる機能的な工夫、そして、マンションというカテゴリーにとらわれない、ゆったりと心地よい空間づくりにご注目ください。
Before
写真は、独立型のキッチン。収納は造りつけのほか置き家具を併用
After
DATA
構造/RC造 9階建9階部分
築年数(リモデル着工時)/約40年
延床面積/129.9m²
リモデル面積/129.9m²
リモデル工期/2012年12月~2013年5月
設計/有限会社ラブアーキテクチャー一級建築士事務所 浅利幸男
施工/栄伸建設
上/浴室は寝室からゲストルームに通じる廊下沿いにある
左/廊下から浴室を見たところ。右奥のトイレと右手前のシャワーブースの間はすりガラスで仕切っている
窓の近くに配置した開放感と光あふれるバスルーム
浴槽、トイレ、シャワーブースをひとつにまとめた浴室は、窓際の廊下付近に配置。壁をガラスにしたので、窓の生み出す開放感や爽やかさが浴室にまで広がります。
また、浴室は住まいの中で最も清潔に保ちたい場所。Aさんはリモデルの打ち合わせの際、「掃除すれば、簡単に完成直後のきれいな状態にもどせる」デザインを希望しました。建築家の浅利さんはそういった希望をもとに、浴室を凹凸の少ないシンプルな形状にしたり、表面が滑らかな部材を選ぶなどして清掃性を高めています。
上/壁の一部に模様入りの壁紙を使用
左/カウンターには洗面ボウルを埋め込み、手拭きタオルなどの雑貨や照明を置ける奥行きをとった
ゲストがリラックスできる優雅なパウダールーム
メインのトイレは、約1坪の広さを確保。後に車いすを使用する場合には、出入りしやすく、トイレ内で方向転換することも可能なつくりです。
同時に、今回のメインのトイレのリモデルでもっとも意識したのは、ゲストがリラックスできること。ゆったりとした空間に植物をモチーフにした壁紙をあしらい、優雅な雰囲気を演出。壁沿いには手洗いカウンターを設けて、照明やフレームを飾れるようにしています。ホテルさながらのこのパウダールームには、おもてなしの気持ちが満ちているようです。vol.13で紹介した「ゲストと住まい手の双方が快適であること=ユニバーサルデザイン」という考え方が、ここでも実践されています。
上/リビングダイニング側から見たキッチン。突き当たりの右奥から主廊下に抜ける
左/作業台とガスコンロはL字型に配置。壁の収納棚の下端は、ほぼ肩の高さ
使いやすさ、片づけやすさを優先したコンパクトなキッチン
キッチンは、調理の最中など、一時的にカウンタートップに物があふれるタイミングがあります。そういった様子がリビングダイニングから見えないように、Aさんは独立型キッチンを望みました。独立型のうえコンパクトですが、リビングダイニングから主廊下までウォークスルーなので空間には広がりが感じられます。
デザインは、住まい手であるAさんの使い勝手を追求。身長に合わせてカウンタートップを低くし、造りつけの収納は作業台付近かららくに手の届く高さに設置しています。また、作業動線が最短になるように、作業台とガスコンロは壁に沿ってL字型にレイアウトされています。
右のグラフは、過去15年未満に建て替え、あるいはリフォームを行った50歳以上の男女に、リフォーム時に配慮した箇所についてたずねた結果です。回答のうちの上位10位以内には、浴室やトイレの高齢者配慮と暖房設置、キッチンのコンロの見直しなど、水まわりに関する内容が6項目を占めました。水まわりはいずれも快適な使い勝手と同時に、家庭内事故も起こりうる箇所だけに、今後の加齢を見越した改善を希望しているようです。
写真/山田愼二 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2013年7月26日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。