ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)
TOTOx日経デザインラボのコラムです。
TOTOx日経デザインラボのコラムです。
vol.07とvol.08は、築50年の団地を丸ごとリモデルした事例を紹介します。住棟5棟と周囲に広がる緑豊かな共用庭は、その魅力を生かしながら新たに生まれ変わりました。
リモデルのテーマは、建物、設備、植栽の刷新だけではありません。この団地に住む幅広い年代層の人々のみならず、団地近隣の住民も含めたコミュニティを育む仕掛けづくりです。そういった工夫が、住棟にも共用庭にも盛り込まれています。今回、話をお聞きしたのは、住棟のうち3棟の設計と貸し庭、貸し菜園の企画に関わった設計事務所、ブルースタジオのクリエイティブディレクター、大島芳彦さん。彼は、「私たちは共同住宅の設計では、常に“コミュニケーションのバリアをフリーにすること”を心掛けます。高齢者だけでなく、住む人全員の孤立化を防ぎたいのです」と語ります。
Vol.07では、ブルースタジオが手掛けた住棟の中から、20代前半からアクティブシニアまでの2人暮らしを想定してつくられた「AURA243 多摩平の森」の賃貸住戸をご覧ください。
左/門やポストも庭側に設けた。デッキに多摩産の木材を活用
右/階段の踏み面の奥行きはゆったり。アプローチにはブロックを
専用庭の広々としたテラスが
近隣との会話を生み出す
写真の住戸は、1階に位置する「ヤードハウス」。52m²もの専用庭にはステージのような、広々としたテラスを設けました。ここでくつろいだり、ガーデニングを楽しんでいると、それだけで、近隣や通りがかった団地の方々と会話がはずみます。そこから、同じ趣味などを持つコミュニティに発展することもありそうです。この住戸は、庭側に玄関を設け、デッキから直接入れるようにしたことも特徴。広々としているので、ゆっくりと上まで上がることができます。
左/寝室とLDKの間は、段差で視覚的に仕切っている
右/水まわりを集中させ、それぞれを使用するのに十分な広さを確保
【TOTO製品】トイレ:「腰掛式タンク密結形便器」
2人暮らし+αを前提に、
1LDKの空間づくり
42.3m²の限られた専有面積に2人暮らし+α(α=趣味、ゆとり、未就学児童など)で快適に暮らせる空間をつくりました。廊下がなく、間仕切り壁を最低限にした1LDKの間取りは、実際の面積よりも広く感じます。リビングダイニングに寝室と水まわりが直結しているので、住戸内での移動がラク。以前の細かく分かれた間取りと比べて、窓からの風や光が住戸に行き渡るようになっており、築50年とは思えない居心地のよさです。
左/玄関の室内側には、シンプルなステップを設置
右/テラスに面した側。掃き出し窓の下端が以前の床の位置
段差は適度な高さを設け
つまづきや踏み外しを防ぐ
この住戸では床を掘り下げてリビングダイニングの天井高を確保し、空間に広がりを生みました。玄関や各部屋とLDとの間に段差ができましたが、適度な高さがあるので、住まい手はかえって注意を払い、つまづきにくくなっています。また、寝室との間の段差をベンチがわりにしたり、玄関の段差に設けたステップの下を収納にするなど、それぞれの住まい手が自分流に楽しく使いこなしているそうです。
所在地/東京都日野市多摩平3-1-7
敷地面積/3,609,65m²
構造・規模/鉄筋コンクリート造・地上4階
建築年月/1960年
リノベーション完成/2011年6月
貸室戸数/24戸(ヤードハウスはうち6戸)
建築設計監理/株式会社ブルースタジオ
ランドスケープデザイン/有限会社オンサイト計画設計事務所
写真/山田愼二 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2012年11月22日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。