ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)
TOTOx日経デザインラボのコラムです。
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vol.03とvol.04では快適な住まいづくりのヒントが満載の高齢者向け住宅を紹介します。伺ったのは、東京の小田急線・成城学園前駅近くに位置するシニアレジデンス、「グランクレール成城」。リゾートホテルにも似た優雅な佇まいが印象的な建物です。1階はレストランなどのセミパブリックスペース、地階はシアタールームなどのパブリックスペース、2階から5階には60歳以上の方向けの居室と、要介護の高齢者向けのケアレジデンスがあります。
vol.03でご覧いただくのは、自立可能な60歳以上の高齢者、いわばアクティブシニア向けの居室です。間取りはワンルーム約41m²から2LDK約87m²まで、複数の種類が用意されています。室内に入ってみると、最新のおしゃれでモダンなマンション、といった趣。高齢者向けのイメージはありません。
「ここは、これまでと同様に毎日楽しく暮らす場所ですから、身体の衰えをサポートする機能は目立つことなく、インテリアにさりげなく溶け込んでこそ、ユニバーサルデザインだと思います」と、当施設の設計を担当した東急不動産シニアライフ事業本部の西田恵介さんは話します。
今回は、60代のアクティブシニアに同行いただき、使い勝手を実感しながらの取材を試みました。それでは早速、快適な暮らしを生む居室の工夫をご覧ください。
左/廊下や各部屋の出入り口もつえでの歩行や車いすの移動に十分な幅
右/寝室のベッドからすぐ手の届く位置に、緊急呼び出し用のコールボタンを設置
すべての部屋をつなぎ、
段差のないワンルームに
居室内はなるべく移動距離が短くなるように、リビングダイニングと廊下を中心に、寝室、水まわりなどの各部屋が配されています。各部屋の出入り口は引き戸なので、開け放てば居室全体がワンルームになり、部屋から部屋への移動がスムーズ。特に、過ごす時間の長いリビングダイニングと寝室が一体化するため、日々の生活がらくになります。 建具は天井から吊るす「吊り戸」を採用しており、居室全体がレールを含め段差のないバリアフリーになっています。歩行中につまづきにくく、つえや車いすを使ってもらくに移動できます。
左/手をついたときに力を入れやすい高さに製作されている
右/座面が脱するので汚れた場合は洗える
家具は手すりを兼ね、
手のつきやすい高さに
居室の家具はオプション。インテリアコーディネートのアドバイスを受けて、ユニバーサルデザインの家具類を紹介してもらうことができます。左のように、手をついたとき力を入れやすい高さのワークデスクやテーブル、背もたれがつかみやすい高さと太さになっているいすが一例です。
この家具類は同施設を企画・運営する東急不動産が、独自に開発したもの。同シリーズの施設で実際に使用する高齢者にヒアリングして、改良を重ねたといいます。家具の形状だけでなく、丁寧なものづくりの姿勢からも、「日々の生活の場にさりげない配慮があるべき」という同社の姿勢がうかがえます。
左・右上/浴室は、出入り口と浴槽付近に手すりを設置。手すりは滑りを防止する樹脂製
右下/洋式便器そばに紙巻器一体型の手すりを。棚の部分は手をついて身体を支えることも
【TOTO製品】浴室/洗面化粧台/トイレ
車いすの使用も想定した
ワンルームの水まわり
浴室、トイレ、洗面の設備はワンルームにまとめられたタイプの居室も用意されました。 中程の脱衣兼移動スペースに十分な広さを確保した点も特徴です。
それぞれの設備も使い勝手を優先して、適したデザインが選ばれています。ユニットバスは、出入りしやすさや介助を想定して間口が広くとれる引き戸タイプを採用。浴槽や内部のカウンターは、端部に丸みがあります。また洗面台はカウンター下の収納が取り外せ、足や車いすの前方が入れられます。
写真/山田愼二 構成・文/介川亜紀 監修/日経デザイン 2012年6月25日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。