子どもトイレを別棟で設けて、誰でも立ち寄りたくなるトイレに

笹塚緑道トイレ/小林純子

2023.5.24

駅にもほど近い、人通りの多い角地の耐候性鋼板の外装は、一見、人の目を驚かせるが、周辺の雑然とした雰囲気のなかで毅然として立つ。近づいていくと、出入り口側は円を基調としたやさしい形状で、かつランダムにあけられた丸窓にはかわいいウサギが顔をのぞかせる。外装で存在感を際立たせつつ、丸みを多用した親しみやすいデザインの施されたトイレには使いやすさや安全への配慮などさまざまな工夫が詰まっている。

建物の軽量化を目指したパネルの構造

鉄道高架下の人通りの多い角地で、前面道路の一部は玉川上水旧水路でもあるため、積載荷重にも制約のある敷地。建物を軽量化しつつ、周囲の雑然とした雰囲気に負けない存在感と、誰もが立ち寄りたくなる安心感を両立させるため、耐候性鋼板サンドイッチパネル工法で躯体を構成する。建物背後と横の自転車置き場側は直線的な構成、人通りの多い道路側は円を基調とした構成としているのも、自由度の高い工法の特性を生かしたもの。

防犯性・安全性にも配慮したブース配置や開口部

男性、女性、バリアフリー、子ども各トイレに、中央のエントランスで分岐して入っていく動線。奥の明るく大きなガラス面に向かってアプローチする女性トイレの動線は、開放的で安心感にもつながる。また女性トイレではブースの扉を入口に正対させ、トイレに入った瞬間に安全が確認できるなど、安全性に注意が払われているほか、パウダーコーナーや複数の鏡、姿見など身繕いしやすい配慮がなされている。男性トイレも女性トイレと同様、大きなガラス面があり、閉鎖的になりがちなトイレに開放感をつくり出している。

建物のアクセントにもなる子どもトイレ

男性、女性、バリアフリートイレのほかに別棟として子どもトイレをつくっているのが大きな特徴。子どもトイレは2棟並んでおり、一つに暖房便座付きの幼児用便器、もう一つにグリップ付きの幼児用小便器が設置されている。男性、女性、バリアフリートイレではいずれも清掃性に優れる壁掛け式の器具を採用。バリアフリートイレではさまざまな人に配慮し、ベビーチェアやベビーシート、フィッティングボードも備える。また、男性トイレ、女性トイレの個室ブースにもベビーチェアとフィッティングボードを設置している。

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

小林純子(こばやしじゅんこ)

設計事務所ゴンドラ所長、2021年より一般社団法人日本トイレ協会会長   1967年日本女子大学住居学科卒、田中西野設計事務所等を経て、札幌(アトリエブンク)、仙台(後針生承一建築研究所)に勤務。帰京後計事務所ゴンドラ設立。1989年チャームステーション(大型公衆トイレ・香川)の設計がきっかけで、商業施設、駅、学校、公園等の公共トイレの設計が中心になる。2014年東洋大学にて「公共トイレ改善の取組の評価と実現方策の研究」にて工学博士。
主な作品・成田空港第2ターミナルトイレ/小田急電鉄新宿西口地下トイレ/京阪電鉄淀屋橋駅トイレ/笹塚緑道トイレ/大井競馬場トイレ/熊本駅ビルトイレ等
著書・トイレが変わる(共著・保育社)変わる学校のトイレ(草土文化)心に響く空間(弘文堂)

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