人々が囲む「街の泉」

西参道公衆トイレ/藤本壮介

2023.6.23

道行く人たちが思わず足を止めたくなるような真っ白な大きな手洗い場。「公衆トイレは都市の中の水場、街の泉」というコンセプトのもと、道路側からも利用可能な手洗い場を備えているのがこのトイレの最大の特徴となる。やさしいカーブを描く手洗い場には、高さを変えながら5つの水栓が用意され、子どもからお年寄りまでこの水場を囲んで手を洗い、あるいは会話をして、小さなコミュニティが生まれることが期待されている。

歩道側からも気軽に使える手洗い場

敷地は甲州街道から参宮橋へと向かう、比較的ゆったりと確保された歩道の脇。近隣にはホテルや学校などもあり、観光で訪れる外国人も学校帰りの子どもたちも誰もが気軽に使えることが目指された。中央に向けてゆるやかに低くなる手洗い場には歩道側に向いた水栓もあり、男女トイレの個室ブース前と歩道側の両側から使えるようになっている。男女トイレには、南北のアーチをくぐって通路を進み、アルコーブを経て個室ブース、小便器コーナーへと向かう。

建物全体に行き渡るカーブのデザイン

バリアフリートイレ、女性トイレ、男性トイレを一列に配置し、わかりやすい平面計画とする。男女トイレ前は、通路であると同時に「街の泉」(手洗い場)を囲む広場の一部であり、ゆったりした幅が確保され、人が手洗いしているときでも後ろを行き来できるように配慮されている。また、建物全体のカーブに合わせて出入り口廻り上部も丸くデザインされており、個室ブースには船室やコックピットに入るようなワクワク感もある。

個室ブースの鏡と手洗いで身だしなみを整える

道路側に特徴的な共用の手洗い場を設けながら、各個室ブース内、小便器コーナーにも手洗い場を設け、またそれぞれ鏡も設置しているのでゆっくりと身だしなみのチェックもできる。器具は、床の清掃性に有利な壁掛け式が多く採用されており、個室ブースの便座にはウォシュレットを完備。バリアフリートイレは、コンパクト・バリアフリートイレパックを採用。また、男性トイレ個室、女性トイレの広いほうの個室と合わせてベビーチェアを設置し、乳幼児連れの方にも利用しやすい配慮がなされている。

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

藤本 壮介(ふじもと そうすけ)

1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では、2025年日本国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任。主な作品ブダペストのHouse of Music(2021年)、マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設(2021年)、白井屋ホテル(2020年)、L’Arbre Blanc (2019年、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013(2013年、House NA(2011年、武蔵野美術大学 美術館・図書館(2010年、House N (2008年)等

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