パビリオンとして機能する公共空間

恵比寿東公園トイレ/槇 文彦

2020.9.25

恵比寿駅徒歩約3分、日中は近隣住宅の親子連れやオフィスエリアで働く人の憩いの場、夜間は商業エリアの休憩スペースとして昼夜で異なる層の利用がある、戦災復興区画整理公園として整備された緑豊かな公園。渋谷区で唯一の児童福祉法における児童遊園にふさわしい姿の明るく清潔な、子どもの利用に配慮した、公園の中の遊具に合わせたユニークなトイレ。単に公共トイレとしての機能だけでなく、休憩も出来る公園内のパビリオンとして機能する公共空間である。

中庭やベンチもある公園の休憩所

多様な利用者にとって衛生的で安全な施設とするために、各ボックスは視線をコントロールしながら分散配置されている。中庭と軽快な屋根によって全体を統合し、ベンチも備えた公園の休憩所として、既存の豊かな樹木と調和した姿を創り出している。
各ボックスと曲面屋根との間から自然光が差し込む明るい空間となっており、照明計画では屋根面に反射した間接光により、トイレ内部の適切な照度を確保しつつ建物周囲も照らすような、夜間の公園においても安全な計画としている。

様々な方向からアプローチが可能な『裏』のない建物

屋根と各ボックス上部のガラスの間に取られた開口により、自然通風・自然換気を促す、明るく快適な空間となっている。利用者ごとに多機能トイレ・男性トイレ・女性トイレを分散配置することで、様々な方向からアプローチが可能。トイレ機能を『明るく開放的な洗面ゾーン』と『プライバシーに十分配慮したトイレゾーン』に分け、洗面ゾーンには出入口を2ヶ所設けることにより、通り抜けが可能な防犯性の高い計画としている。
また、洗面台背面のカラーパネルにより、男性トイレ・女性トイレが視覚的に分かりやすいように色彩計画がなされている。

親子連れにも配慮されたデザイン

3つの異なる空間は、白を基調としたシンプルで清潔感のあるデザインで、公共トイレに相応しい堅牢でメンテナンスのしやすい材料を使用している。男性トイレ・女性トイレとも、ベビーカーと一緒に入ることのできる広めのブースにベビーチェアとベビーシートを設置し、公園を利用する親子連れに配慮している。洗面台は、高さ750㎜と550㎜の2つの高さを設けている。
多機能トイレの壁に表示された矢印とピクトグラムは、多機能・男性・女性のトイレを案内するサインとなり、出入口のサインによって内部の機能が分かるようになっている。

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

槇 文彦

1928年東京都生まれ。1952年に東京大学工学部建築学科を卒業し、アメリカのクランブルック美術学院及びハーバード大学大学院の修士課程を修了。スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル、セルト・ジャクソン建築設計事務所に勤務する。1956年から65年まで、ワシントン大学とハーバード大学で都市デザインの準教授も務める。1965年に帰国、株式会社槇総合計画事務所を設立。1979年から東京大学教授を務め、1989年まで教壇に立つ。プリツカー賞を1993年に受賞し、2011年にはAIAアメリカ建築家協会から贈られるゴールドメダルも受賞。

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