トイレに求められる“当たり前”をデザイン

恵比寿駅西口公衆トイレ/佐藤可士和

2021.9.27

多様な人々が行き交うJR恵比寿駅西口の駅前広場に建つ。「清潔・安心・調和」という、公共トイレに求められる “当たり前のこと”にひとつひとつ向き合ってデザインされた「真っ白なトイレ」。アルミルーバーにより、明るく軽やかな印象を持たせ、都市の街並みに自然に馴染む佇まいとなっている。日が暮れると、施設内のダウンライトと、ルーバーを下から照らすフットライトが点く。ルーバーの足元が抜けているため、周囲からはまるで四角いボックスが浮いているように見え、建物そのものが大きな街灯の役割を担う。

ルーバーが内と外をやわらかく仕切る

ルーバーはトイレ施設をカバーし、外からの視線をやわらかく遮っている。同時に、スリットを通してうっすらと中の様子をうかがうことができ、プライバシーの確保と安心感の醸成を両立させている。各トイレブースへの入口は通りから見て建物の背面にあるので、通行する人の視線を気にせず入ることができる。2カ所あるアプローチのうち、駅側に近い入口の脇にはだれでもトイレが設置されているので、車いすやベビーカーでも利用しやすい。

白で統一された空間が明るく爽やか

毎日見る駅前のシンボルとして、極端に目立ち過ぎず、恵比寿駅を利用する人々の気持ちが、少し明るく、清々しくなるような外観となっている。施設入口に表示されたピクトグラムも佐藤可士和氏によるデザインで、THE TOKYO TOILETプロジェクトの全トイレに共通して使用されている。入口を入ると回廊がコの字にレイアウトされ、白で統一された空間に、日中は明るい自然光が射し込み、爽やかな雰囲気が漂う。

多様性に配慮し全ブースを男女共用に

多様性への配慮からすべてのブースを男女共用に。ドアに表示されたサインを確認し、個人の特性や必要とする設備に応じたブースを選択できる。全大便器にウォシュレットを設置したうえで、小便器併設タイプとオストメイトや乳幼児連れに配慮したタイプを設けている。だれでもトイレには、介助が必要な方のおむつ交換や衣服着脱などのために、パブリック用折りたたみシートも設置。また、全ブースに洗面器を設置し、手洗いまでをブース内で完結できる仕様となっている。

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

佐藤可士和

クリエイティブディレクター/ SAMURAI代表
主な仕事に、国立新美術館のシンボルマークデザイン、今治タオル、ふじようちえんのトータルプロデュースなど。「ユニクロPARK横浜ベイサイド店」「くら寿司浅草ROX店」が特許庁による日本国内初となる内装意匠に登録(2020年11月)されるなど、ブランドをアイコニックに体現するクリエイションを幅広い領域で展開。文化庁・文化交流使(2016年度)、著書「佐藤可士和の超整理術」(日本経済新聞出版社)ほか。

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