ひっそり佇む「あまやどり」

神宮通公園トイレ/安藤忠雄

2020.12.17

渋谷駅から明治通り沿いのMIYASHITA PARKを通り抜けた場所に位置し、周囲に商業施設や学校が多く、幅広い層の利用者がある神宮通公園内のトイレ。小さな“あずまや”なりに、公共トイレという機能だけではない、都市施設としての意味、パブリックな価値を持つものとして、円形平面の棟から屋根庇が大きくせりだし縁側をつくる造形に。「あまやどり」と名付けられた、神宮通公園の木々の緑の中にひっそりと佇むこのトイレは、雨に濡れぬよう、夏の強い日差しを避けられるよう配慮している。

アルミ素材の風と光を通すたて格子

以前は落書きが多く清潔感もなく、怖くて入りづらい印象を与えていたことから、あまやどりができ、中に入ると美しいと感じてもらえるトイレを考えた。建物の耐久性やメンテナンス性を考慮してアルミ素材を採用。利用者の安全と安心を考慮し、風通しがよいことと落書きなどのいたずら防止を兼ね、外壁をたて格子に。夜、庇部分と内部からの照明の光が、たて格子を通して内外部を優しく照らし、夜間もだれもが公園トイレを安心して利用できる。

グルリと通り抜けられる二つの入口

渋谷側の入口正面には、障がいある方も入りやすいようだれでもトイレを配置し、この入口から反対側の入口に配置されている男性トイレと女性トイレへとそれぞれアクセスできる。安全で安心な空間とするため、外壁は風と光を通すたて格子とし、利用者が円形を描く壁に沿ってグルリと通り抜けられる設計となっている。通路上には、男女トイレ付近に洗面コーナーが設置されており、手洗いのみの利用もしやすい。

さまざまな利用者に配慮した空間

各ブース内は天窓による自然光が得られる。だれでもトイレは車いす使用者やオストメイトに配慮し、コンパクト多機能トイレパックを採用し、ベビーチェア・ベビーシートも完備。男性トイレは、床の清掃性や節水性に優れたマイクロ波センサー壁掛小便器を設置。男女トイレとも床の清掃性のよい壁掛大便器セット・フラッシュタンク式を配備し、乳幼児連れに配慮しベビーチェアを設置している。各入口・ドアに配したピクトグラムは、THE TOKYO TOILETプロジェクト共通のもの。渋谷側の入口近くに設置されたトイレ案内板には配置図を掲示している。

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

安藤 忠雄

大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。
代表作に「光の教会」、「FABRICA (ベネトンアートスクール)」「ピューリッツァー美術館」、「地中美術館」、「兵庫県立美術館」、「21_21DESIGN SIGHT」、「東急東横線渋谷駅」、「プンタ・デラ・ドガーナ」、「上海保利大劇場」、「こども本の森 中之島」など
79年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、85年アルヴァ・アアルト賞、95年プリツカー賞、96年高松宮殿下記念世界文化賞、02年AIAゴールドメダル、10年文化勲章、13年フランス芸術文化勲章、15年イタリアの星勲章など受賞。
イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。
97年より東京大学教授、03年より名誉教授。
撮影:閑野欣次

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