現代の川屋(厠)

恵比寿公園トイレ/片山正通(ワンダーウォール)

2020.11.24

地下鉄日比谷線恵比寿駅代官山側出口から2分、駒沢通りから少し入った場所に位置し、教育施設、教会や商業施設が隣接する公園内の公衆トイレ。日本のトイレの起源である縄文時代早期の川屋(厠)にインスピレーションを得て、コンセプトを「現代の川屋(厠)」とした。建物は、公共施設としての耐久性を備え、プリミティブな素材でもあるコンクリートを使用。木目の質感を生かして加工した壁を15枚いたずらに組み合わせ、トイレでありオブジェクトでもある「曖昧な領域」を構築している。

公園に佇むオブジェクトとしての在り方

トイレデザインの際念頭に置いたのは、遊具やベンチや樹のように何気なく公園に佇むオブジェクトとしての在り方。トイレでありながら、人々が迷路のような不思議な遊具と戯れるようなユニークな関係性をデザインしている。夜は、間接照明の光がトイレの内外を柔らかく照らし、照明に照らされた遺跡のよう。各トイレ入口の足元や壁と壁の間からのスリット状の光が、通りからそれぞれの入口への道標となり、夜間も誰もが安心して利用できる。

壁を組み合わせて構成された建物

公園から入ってすぐの場所に立地する、公園の利用を問わずさまざまな層の利用者がいるこのトイレは、壁を組み合わせて構成された建物の壁と壁の間に、男性トイレ・だれでもトイレ・女性トイレの3つの空間への入口を配置している。各入口のアプローチ部分、洗面コーナーやブース内のトップからの間接照明に照らされた、明るすぎず、暗すぎない光と美しい木目を配した室内は、清潔で安全に利用できるよう配慮されている。

白を基調としたシンプルなデザイン

3つの空間のアプローチに対して、スムーズな動線上にトイレおよび洗面コーナーを配置。だれでもトイレは、多目的シートを設置し、ベビーカーと一緒に入ることができる十分なスペースと設備を用意。男女トイレとも乳幼児連れ配慮として、ブース内にベビーチェアを、女性トイレにはベビーシートも設置している。内部は白を基調としたシンプルなデザインで、床はコンクリート施工し、メンテナンスしやすい。各入口に設置されたピクトグラムは、THE TOKYO TOILETプロジェクト共通のもの。トイレ入口前には配置図と各トイレの設備が掲示されている。

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

片山 正通

インテリアデザイナー
Wonderwall®︎ 代表、武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 教授
代表作に、ユニクロ グローバル旗艦店(NY、パリ、銀座等)、INTERSECT BY LEXUS(青山、ドバイ、NY)、外務省主導の海外拠点事業 JAPAN HOUSE LONDON、2020年開業の虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー(商業施設環境/ARCH)等。2020年、オランダのデザイン誌『FRAME』主催の「FRAME AWARD 2020」で2019年のフィリップ・スタルクに続きLifetime Achievement Awardを受賞。

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