地域の人たちの「広場」に付加されたトイレ

幡ヶ谷公衆トイレ/マイルス・ペニントン・東京大学DLXデザインラボ

2023.8.25

コンセプトは「・・・with Toilet」。周辺住民たちも巻き込んでのワークショップなどを経てたどり着いた方向性が「トイレもある施設」だった。トイレの機能を建物外周に沿って分散させ、その中央におよそ40㎡の「広場」をつくって多目的な利用を可能にする。ギャラリーやポップアップ店舗、集会場、待合室、さらに奥の壁面をスクリーンとしたパブリックビューイングなど、多くの可能性を秘めた場が街角に誕生した。

交差点に出現した屋根の架かる小さな広場

敷地は中野通りと水道道路の交差点。交通量が多く、喧噪の激しい街角に、屋根の架かった広場がしつらえられるように建物が立っている。交差点側に大きく開放された佇まいは、誰もが気軽に立ち寄りたくなる様相をつくりだし、さまざまなコミュニティスペースになることが期待されている。周囲の中高層マンションなどからの景観も意識して屋根形状は慎重に検討され、鋭角の金属パネルの組合せにより構成されている。

※映像は竣工前に許可を受けて撮影しています。

ベンチの架け方で広がる広場の使い方

交差点側の開口の高さは約5.3m。天井が奥に向かって低くなっているため、より開放的に感じられる。建物の中央にあるオープンなスペースは、設計者が「トイレもある施設」と表現するように、むしろこの施設の主役。幾何学的に配されて埋め込まれた床のポールが、昇降式の車止めのようにせり上がり、2本のポールに座面を掛け渡すことでベンチとなり、そのベンチの配置の仕方でさまざまな使い方が可能となる。

広場を取り囲むようにトイレブースを配置

トイレは広場正面から見て、左側と奥に誰でも使える個室ブース(トイレ1、2)を、右側に小便器コーナーを配置する。左側のトイレ1はオストメイト対応で、また大便器背面には背もたれを設置し、車いす使用者が利用できるよう配慮、奥のトイレ2はベビーシートやベビーチェア、フィッティングボードを完備し、ベビーカーごとブースに入れる乳幼児連れの方にやさしい仕様とし、それぞれ異なる器具を設置することでトイレ利用者の分散を図っている。いずれのブースでも、大便器や洗面器のほか、チャームボックスも清掃性に優れた壁掛け式が採用されている。ピクトグラムはTHE TOKYO TOILET プロジェクト共通のものを使用。

コンセプトデザイン マイルス・ ペニントン、東京大学 DLX デザインラボ
建築デザイン 東京大学生産技術研究所 今井公太郎研究室、本間健太郎 研究室

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

マイルス・ペニントン/東京大学DLXデザインラボ

マイルス・ペニントンはデザイン先導イノベーション分野の教授として、東京大学生産技術研究所の独創的かつ国際的なイノベーション研究所、DLXデザインラボの運営に尽力。以前はロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで教鞭を執り、インペリアル・カレッジとの共同修士プログラム、イノベーション・デザイン・エンジニアリング(IDE)でプログラム長を担当。自身もIDEプログラムの出身(1992年修了)。また、国際交流プログラム、グローバルイノベーションデザイン(GID)の創設者であり元リーダー。過去には学術面での活動と並行し、イノベーション・コンサルタント会社Takramのロンドン事務所長も兼務。2017年9月、東京大学着任のため日本に移住。

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