ショーウインドウのような見せるトイレ

はるのおがわコミュニティパークトイレ/坂 茂

2020.10.23

代々木公園沿いの道を挟む場所に位置し、公園内には渋谷はるのおがわプレーパーク、公園広場、大人から子どもまで利用するスポーツ施設があり、親子連れから大人までの様々な層の利用者がある。
デザインコンセプトは「代々木深町小公園」と同様、「瞬間調光ガラスを用いた明るくキレイ」で、「キレイに使おうと思わせる」、「中がキレイかどうか、誰もいないかの不安をなくす透明な」トイレ。ショーウインドウのように内観を見せることで、清潔な利用を意識させるデザインとなっている。

美しい行灯へと変わるガラスボックス

全室使用している、新しい技術でつくられたカギを締めると不透明になる瞬間調光ガラスにより、プライバシーを確保すると同時に一見して利用中とわかる仕様。周囲の自然になじむ色合いで並ぶ、3種類の異なるトイレ。夜の使用時の不透明な外観は、昼間の不透明時の色合いと異なり、行灯のように公園を照らし、誰もが安心して利用したくなる。

森の中にいるような室内空間

公園のトイレでの、入るときの中がキレイかどうか、そして中に誰も隠れていないかどうかという二つの心配ごとにも十分配慮されている。壁を一面鏡とすることで、周囲の緑が映り込み、森の中にいるかのような室内空間となっており、カギをかけるとガラスが不透明となり、一見して利用中だとわかり、子どもにも女性にも安心して利用できる。停電時や故障の際もガラスが曇り中が見通せない設定。通電時の消費電力は3.5W/㎡と少なく、ランニングコストも心配なく使用できる。

様々な利用者に配慮されたデザイン

全室、耐久性、耐水性、抗菌性、清掃性にも優れているエポキシ樹脂系塗床材を使用し、便器はすべて壁掛タイプを採用しており、清掃がしやすい。多機能トイレにはお子様連れやオストメイトに配慮しベビーシートとベビーチェアを設置し、オストメイト対応器具も配備されている。男性・女性トイレでは個室完結型で通常の大便器ブースより大きくゆったりとした設計で、お子様連れの方にも使いやすい。また、各トイレの入口には、今回のTHE TOKYO TOILETプロジェクト共通のピクトグラムを設置しており、誰でもわかりやすい表示となっている。

水まわりの詳細(器具・図面)については こちら をご覧ください。

坂 茂

1957年東京生まれ。84年クーパー・ユニオン建築学部を卒業。82-83年磯崎新アトリエに勤務。85年坂茂建築設計を設立。95年から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コンサルタント、同時に災害支援活動団体ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク設立。これまでに、フランス建築アカデミーゴールドメダル、日本建築学会賞、フランス国家功労勲章オフィシエ、フランス芸術文化勲章コマンドゥール、プリツカー建築賞、JIA日本建築大賞、マザー・テレサ社会正義賞などを受賞。ハーバード大学GSD客員教授、コーネル大学客員教授を務め2011年より京都芸術大学教授。2020年より東北大学災害科学国際研究所特任教授。現在、慶応義塾大学環境情報学部教授。

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