ホッとワクワク+(プラス)

ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラムホッとワクワク+(プラス)

TOTOx日経デザインラボのコラムです。

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vol.54 座談会 国際福祉機器展のTOTO×DAIKEN×YKK AP展示 今年はもっと「見て・触って・試して」

TOTOテクニカルセンター東京にて

vol.54 座談会国際福祉機器展のTOTO×DAIKEN×YKK AP展示 今年はもっと「見て・触って・試して」

TOTOテクニカルセンター東京にて

9月25日から27日にかけて東京ビッグサイトで開かれるアジア最大級の総合福祉機器展「第46回国際福祉機器展H.C.R.2019」。
TOTO・DAIKEN・YKK AP(以下TDY)の3社は昨年に引き続き合同で出展します。
展示のコンセプトや展示する商品、来場者の皆さまに注目いただきたい点を、TDY各社の担当者に聞きました。
来場前にご一読いただくと、より効率的に会場で商品や情報に触れられること間違いありません。

注)写真について、TDY東京コラボレーションショールームにて撮影したものはTDY、TOTO東京テクニカルセンターにて撮影したものはTTCと表記。
なお、東京テクニカルセンターは建築専門家向けの施設です。見学には予約が必要になります。

  • UD・プレゼンテーション推進部 UD推進グループ 石川智之(いしかわ ともゆき)水栓金具の品質保証業務、福祉機器の研究業務を経て、2017年度より販売部門にて住宅におけるユニバーサルデザイン/バリアフリー提案に携わる。2018年度より国際福祉機器展H.C.R.に参画。
  • UD・プレゼンテーション推進部 UD推進グループ 高野陽子(たかの ようこ)2015年度より販売部門にて主に高齢者住宅・高齢者施設におけるユニバーサルデザイン/バリアフリー提案に携わる。2018年度より国際福祉機器展H.C.R.に参画。
  • 大建工業(DAIKEN)マーケティング部 加藤奈々(かとう なな)マーケティング部にて販売促進、広告宣伝等の業務を担当。特に室内ドアやシステム収納のプロモーション業務に携わる。2017年度より国際福祉機器展H.C.R.に参画。
  • YKK APリノベーション本部 営業企画部  松倉優貴(まつくら ゆき)ビル建材第二事業部にて集合住宅・ビル商品の販売促進、広報室にてPR業務を経て2014年度よりリノベーション本部で戸建住宅のリフォーム・リノベーション分野の販売促進を担当し、2018年度より国際福祉機器展H.C.R.に参画。

健康寿命の延伸を考えた住まいへの配慮

健康寿命の延伸を考えた住まいへの配慮

 

TOTO 石川智之氏、高野陽子氏
DAIKEN 加藤奈々氏
YKK AP 松倉優貴氏
(以下、敬称略)

―――まずは、2019年の展示コンセプトを教えてください。

石川:
2018年に引き続き、“つなぐ、素(そ)のままのくらし”をコンセプトに掲げています。高齢者・障がい者とそのサポートをする方の両方が快適に過ごせる空間をご提案することで、介護される側・する側をつなぎたいと思っています。

―――このコンセプトが決まった背景には、どういった社会的動向・法的動向があるのでしょうか。

石川:
“人生100年時代”と言われる中で、“平均寿命は伸びているけれど、健康寿命は伸びていない”という問題があります。私たちTOTOとDAIKEN、YKK APは住宅関連メーカーとして、おひとりでも使いやすく、介助するときもされるときも使いやすい商品と、安全で快適に過ごせる空間を提案することで、ご自宅で長く健康に暮らせるお手伝いをしたいと考えました。

TOTOとDAIKEN、YKK APはアライアンスを組み、全国でコラボレーションショールームも展開している
https://re-model.jp/showroom/tokyo.html

「天然木手すり61シリーズ」。ひじ掛けや立ち座りの際の手すりとして、また飾り棚としてトイレ空間を楽しく演出

―――住宅向けの商品と介護施設向けの商品の双方を展示予定ですね。
住宅特有の困りごとと、それを解決できる展示商品やご提案を教えてください。

石川:
高齢者の事故で多いのが、転倒とヒートショックです。たとえば、高齢者が暮らすような築30~40年の住宅は、転倒の一因である「段差の多さ」、ヒートショックにつながる可能性がある「お風呂場の寒さ」といった課題があります。 TOTOの商品の多くは、段差がなくフラットだったり、掴みたいところに支えがあったりと、転倒しにくいように配慮されています。手すりの設置は特に転倒防止に効果があるのですが、「まだそんな歳じゃない、来客があったときに見られると恥ずかしい」と嫌がる高齢者もいます。そうした方におすすめしているのが、たとえば、手すりを兼ねた棚付紙巻器です。小物を置いたりできるので一見すると手すりに見えませんが、「天然木手すりシリーズ」は手をついて体を支えることができます。
松倉:
心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすヒートショックは、「浴室は暖かいのに脱衣所が寒い」「各部屋は暖かいのに廊下・トイレが寒い」といった温度差が一因と考えられています。YKK APでは、今ある窓枠に新しい枠をかぶせて窓を二重窓にする「かんたんマドリモ」というリフォームを行って、冷たい外気が屋内に流れ込むことを防ぎ、家全体の室温を均一にするご提案をしています。壁などを壊さず簡単に工事できるうえ、ぐっと快適になるんですよ。
「ミルクマン」

約半日で窓を一新できるYKK APのリフォーム「かんたんマドリモ」のイメージ

TOTOのカタログでは水まわりをひとまとめにするプランを紹介

「かんたん ドアリモ アウトセット玄関引戸」では、既存の枠に新しい枠をかぶせる「カバー工法」を採用。壁を壊さずに1日で玄関ドアを引戸に替えられる(場所/TDY)

石川:
浴室やトイレで起きるヒートショック対策として、浴室・洗面所・トイレなどの水まわりをひとつの空間にまとめるのも手です。2019年3月に国土交通省から公表された「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」の中でも温熱環境は一番重要な項目として挙げられています。また、水まわり空間が広くなり、介助はもちろん掃除もしやすくなるので、リモデルを希望するお客様におすすめしています。
松倉:
YKK APではドアを1日で交換できる「かんたん ドアリモ 室内折戸」というリフォームも提供しています。身体の自由がききにくくなってきた、あるいは車いすを利用している場合など、開き戸から折戸への交換をご提案することがあります。 開き戸は開閉時に立ち位置を移動しなければなりませんが、折戸にすると開閉に必要なスペースが2分の1になるので、ほとんど身体を動かさずに開閉できます。
石川:
「掃除のしやすさ」も重要なポイントですね。生活者にアンケートを取ると、「掃除が大変、億劫」というご意見が多く挙がります。トイレやお風呂場で長時間屈んで力を入れてこすって……というのは、高齢者には負担が大きいのでしょう。TOTOでは「きれい除菌水」で汚れの発生を抑えて、掃除の負担を減らす工夫をしています。
加藤:
DAIKENには汚れにくくシミになりにくいトイレ専用床材「ハピアフロア トイレタフ 石目柄」もあります。トイレと一緒に床材も交換するといいですね。
松倉:
窓については、「結露の掃除が嫌」というご意見をよく耳にします。結露がもとでカーテンや窓の木枠が汚れたり、カビが生えてしまったりしますよね。カビは放っておくと、喘息やアレルギーなどの体調不良の原因にもなります。 窓は、家の中でもっとも熱が出入りしやすい場所です。シングルガラスの場合、夏は74%の熱が室内に入り、冬は52%が出ていってしまいます。リフォームで新たに内窓を取り付けて二重窓にしたり、フレームが熱を伝えにくい樹脂でできている樹脂窓に交換すると、夏の暑さや冬の寒さが軽減され結露もなくなります。

介護負荷を軽減し、スタッフの働きやすさを向上する

介護負荷を軽減し、スタッフの働きやすさを向上する

―――次に、施設特有の困りごとと、それを解決する商品を教えてください。

加藤:
介護施設は2000年頃に建てられたものが多く、これからリフォーム需要が増えると予想されています。①リフォームの際に取り入れていただきたいのが、車いすの走行傷に強く高齢者が滑りにくくつまずきにくい床材「おもいやりフロアⅡ(※1)」や、転倒したときの衝撃を抑える床材「コミュニケーションタフケア(※2)」です。また、介護施設特有の臭いを消臭するような機能を持つ天井材「メディカルトーン」も環境改善に役立ちます。
(※1)「おもいやりフロアⅡ」は住宅介護や施設の居室空間向け商品
(※2)「コミュニケーションタフケア」は介護施設の共有空間・土足対応商品
加藤:
車いすの方が快適に暮らすための配慮も必要ですね。DAIKENでは、引き戸と開き戸をドッキングさせた大開口ドア「ひきドア」をご提案しています。間取りの兼ね合いでトイレのスペースが0.5坪以下になっていることがあります。そういった狭いトイレでも、通常は引戸を引くと出入りでき、開き戸を開くと大開口になる「ひきドア」にして、廊下側の間口を全開できれば、車いすのまま入れますし廊下側に人が立てるので介助もしやすくなるんです。
松倉:
臭い対策のため、施設には「換気をしたいから窓を開けたい、でも安全を確保するため窓を閉めたい」という相反する要望があると聞きます。安全性を保ったまま換気するために、 YKK APでは手の届きにくい上部に換気用の小窓を設置したり、開く幅を制限できる引き違い窓にしたりするご提案をしています。また、自然光を取り入れるために窓を大きく取ると、使用するガラスは大きく、重くなります。ペアガラスの窓ならなおさらですね。施設特有の大きなガラスは、1枚の重さが100kgに及ぶこともあります。ですから、弊社では開閉時の負担を減らすために、握りやすく半分の力で操作できる「サポートハンドル・サポート引手」もご用意しています。
高野:
施設では介助者の「負担の軽減」と「働きやすさの向上」が急務になっていると感じます。
「前方ボード(スイングタイプ)」は、その助けになる商品のひとつ。排泄の介助の際、手すりだけの支えでは体がふらつき、転倒することもあり、介助者が体を抱えて介助する必要がありましたが、この前方ボードがあれば、支持点が増え、立位姿勢・座位姿勢が安定するので、介助者の負担軽減につながり、腰痛予防にも一役買うはずです。
石川:
ベッドの脇に置ける「ベッドサイド水洗トイレ」を活用すると、トイレまでの移動距離が短くなる分、転倒リスクも減りますし、介助者がトイレまで誘導する時間も短縮できます。ポータブルトイレと違い水洗なので後始末もなくなり、居室内で臭いも残りません。
高野:
尿取りパッドなどの異物を誤って流し、便器の奥で詰まるトラブルも時々起きています。場合によっては、便器を取り外さなければならないような大掛かりな工事が必要となりますし、復旧するまで遠い場所にあるトイレを使用しなければいけなくなり、介護する側にもされる側にも負担がかかります。そこでTOTOでは、掃除口付きの便器を開発。掃除口から詰まりの原因を確認して、異物を取り除くことができるので、便器が詰まっても早期復旧が可能になります。高齢者介護施設での介護人材不足も深刻ですね。商品を通していかに介助の負担を減らせるか、働きやすい職場にできるかも大事にしている視点です。
石川:
今年は介護施設向けのスタッフルームを展示会場につくり込み、見ていただきます。寝転んで休息できるDAIKENの和紙でできた畳の小上がり空間と、サッと汗を流せるTOTOのシャワールーム、LED付きのおしゃれな洗面台を組み合わせました。介護スタッフの皆さんの心身のケア、モチベーション維持を狙った提案です。

「ひきドア」は3枚の扉を横に引いた後(写真上)、取っ手を手前に引く(写真下)と開く仕組み(場所/TDY)

便器への立ち座りの動きや、立っているとき、座っているときなどの姿勢を安定させる「前方ボード(スイングタイプ)」。水平方向にスイングし、4カ所でロック可能(場所/TTC)

部屋に後付けできる「ベッドサイド水洗トイレ」(場所/TTC)

DAIKENの収納ユニット「MiSEL」に畳表を組み合わせた小上がり空間(写真/DAIKEN)

―――こうした商品やサービスには、皆様、あるいは関係者などの介護・介助体験が反映されているのですか?

石川:
私の祖母は90歳を超えているのですが、夏場でも厚着をしているんです。温度がわかりづらくなっているのですね。商品を通して配慮する必要があると、身をもって感じました。 また、ヒアリングのため、ユーザーのご自宅に伺う機会があります。洗面所の下の収納スペースを見せていただくと、何がどこにあるのかわからない位ものがたくさん詰まっていることが多いですね。開き扉だと屈んで中を覗かなければいけませんが、引き出し型の収納にすると必要なものをぱっと取り出せるので使いやすいと思います。
高野:
会社の研修で高齢者の動きや介助者の動きを体験しました。
TOTOでは、年齢や身体状況の様々な方にご協力いただき、動作検証やヒアリングなどを行い、商品・空間提案にお客様の声を活かしています。
松倉:
YKK APでは一般生活者からモニターを募り、開発中・開発後の商品を操作してもらい、そこでいただいたご意見を商品に反映しています。
加藤:
DAIKENでは、開発中の商品をデイサービスに取り入れてもらいご意見を伺ったり、介護スタッフの方にヒアリングをしたりしています。新しいスタッフが入ってきたとき、何がどこにあるのかがすぐにわかる状態だと現場のオペレーションが楽になると聞きました。収納も、施設運営をスムーズにする大事なポイントですね。

3社揃うことで、様々な空間でより効果的な提案が可能に

3社揃うことで、様々な空間でより効果的な提案が可能に

―――TDY3社のコラボレーションによって、どのような相乗効果が望めますか?

石川:
商品単体ではなく、空間としてご提案できることです。浴室や洗面所に暖房を入れても窓の断熱性が低いと熱が外に逃げてしまいますが、YKK APの樹脂窓や二重窓を取り入れるとより暖かな空間を保つことができます。また、トイレ空間が狭くても、扉をDAIKENの「ひきドア」やYKK APの「かんたん ドアリモ 室内折戸」にすれば、杖をついた方や車いすの方でもスムーズに出入りできるようになります。つまりコラボレーションで、それぞれの商品の機能・効果を強化できるのです。
高野:
DAIKENとTOTOは、トイレの手すりと壁材の組み合わせも一緒に検討していますので、手すりの視認性が向上したトイレなどのコーディネートにも参考にできると思います。
石川:
TDY一体となって展示を行いますので、空間がイメージしやすく、新築やリモデルの参考になると思います。

―――今回のH.C.R.では、どのような点をチェックしてほしいですか?

高野:
バスリフトやトイレリフトなど、普段なかなか触れる機会のない商品は、特に実際に試していただきたいですね。使用感をつかむことは重要です。「動くところを見るのは初めて」「自分が乗る側になるのは初めて」という方は、少なくありません。 浴槽など普段使い慣れているものもぜひ。「このユニットバスは、浴槽に出入りするときにちょうどいい位置に支えがある」など、見ているだけではわからない小さな工夫に気付けるので、「見て・触って・試して」いただきたいと思います。
石川:
それぞれの商品のそばには説明スタッフが常駐します。また、介護保険を使える商品のエリアを設けたり、TOTOでは工務店のご紹介も行うなど、導入に向けてのアドバイスも可能です。わからないことや、不安なことがあれば、どうぞお気軽に現場のスタッフに話しかけてください。お待ちしています。
「ミルクマン」

「魅力ある展示にしたいと思います」と4人は口をそろえる

編集後記H.C.R.は介助・介護をサポートする最新の機器や情報が得られるイベント。超高齢社会に突入以降、機器の精度は上がり、種類も豊富になっています。それだけに現場で目移りせず、参加者の皆さんがそれぞれ目的に合わせて深く“取材”するには、事前の情報整理がおすすめです。当イベントはリピーターも増え、この期間中に同窓会のようなシーンが見られることも。現場の方々同士の情報交換ができる場としても、H.C.R.の意義は高まっているようです。日経デザインラボ 介川 亜紀

写真/鈴木愛子(特記以外) 取材・文/飛田恵美子 構成/介川亜紀 監修/日経デザインラボ 2019年9月2日掲載
※『ホッとワクワク+(プラス)』の記事内容は、掲載時点での情報です。


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