TOTO株式会社 執行役員 デザイン本部長
広津 有子
造形学部 工芸工業デザイン学科 1992年入社
広津 働く人の心根が優しい会社だと思う。わからないことがあったとき、それに関係していそうな人とか部署に電話すると、惜しみなくアドバイスをくれるし、その人がわからなくても「〇〇さんに聞いたらわかるよ」とか、なんとか協力しようとする文化が根付いている。うちの担当じゃありません、以上!というような対応をされることが、まずない。自分で考えようとする人、前に進もうとする人、努力する人に対して、周囲は惜しみなく知恵を貸し、伴走してくれる、お客様のためになるアイデアなら皆でカタチにしていく、そんな会社。 あえてマイナス面を言えば、慎重すぎるところがある。誠実に確実に物事を進めようとするあまり、計画段階で時間がかかりすぎる事がある。時間がかかる業務プロセスは、時代に合わせて変化させてゆく必要があると感じる。
広津 これからも水まわりにおいて、世界中の人々の「快適」に貢献していきたい。ただし、今は変化点。世界的に価値観が変化しているし、多様化している。「快適」とか「衛生」の定義や軸も、次の50-100年に向けて変わっている時。従来の考え方では提案しきれない難しい局面だと思う。 TOTO商品はこれまでずっと、きれいや清潔、使いやすい、ここちよいなどの「快適」を追求してきたが、もう一度「快適」の意味を捉え直さないといけないと思っている。世界のさまざまな環境にいるお客様の価値観、変わりゆくニーズを、どれだけ的確に捉えられる会社になるかが大事。そのためには人財の多様性も必須になるだろう。年齢や性別・居住国や家族構成、生活習慣。どのようなお客様であっても、その方々の属性にあった快適性を理解し、多彩な解を提示できる情報量とノウハウのある会社にならなくてはいけないと思う。
広津 世の中が変わっていく中で、価値観や生活風習を敏感に察知できる感度がある人が重要だと思う。そのためには、一つのジャンルだけに興味があるというよりは、幅広く、専門外であっても色々なことに興味があって好奇心旺盛な人が入社して下さるといいと思う。世間で起きている事象は相互にどう関係しているのか、「風が吹けば桶屋が儲かる」的に、世の中で起こっていることを俯瞰で見る目がある方、理解しようとする方に来て頂きたい。それは、デザイナーなどの職種でも同じ。自分の専門ジャンルだけに詳しい。という人よりも、いろいろなことに興味を持ちながらその道を究めてくれる人が良いと思っている。そんな方がいたら、ぜひ、世界各国のお客様に向けたデザインを一緒に考えて頂きたい。
広津 まず、商品を購入してくださったお客様の喜ぶ声を聞いた時。これに勝る喜びはない。若い頃、自分がデザインを担当した浴室用の子ども向けのタイル柄が、インテイリア雑誌のリフォーム実例に掲載されたことがあった。お施主様のインタビュー欄に「このタイルにしてから浴室が明るくなり、子どもとの対話が増えて気に入っている」とのご意見があった。入社して初めて自分の仕事がお客様の毎日の生活につながってると実感した瞬間だった。こういう瞬間をずっと求めながら仕事を続けているのかもしれない。
また、デザイナーとして商品開発に参加し、いろいろな人の知恵が交じり合って、お客様のための新しい「快適」や「美しさ」が発明されて、世の中に送り出される場面に立ち会うことができるのも、仕事のモチベ―ションになっている。新しいものを生み出すのは、苦労も多い分、実際に出来上がったときの感激はひとしお。同時に、そんな経験を繰り返し、共に働く仲間たちの成長を実感するのも、うれしい瞬間だ。
広津 相手の立場になって考えること、相手に役に立っているか考えること。そして、迷ったら「お客様ならそれをどう思うか?」と自分に問いかけること。さきほどの相互理解の話と同じで、自分の意見が通らない、仕事の場で意見が対立するときは、相手の正義、相手がどうしてこの行動に出るのかな、と考える。相手は上司から何を言われているのか?何を目指して意見してくれているのか?などと考えると、コミュニケーションの方法が変わってくる。自分のアクションがお客様や相手のためになっているか、役立っているか、今一度問い直してみる。自分がこだわっていることも、お客様や相手にとって、無意味だったり、意味が薄いことだったりしたら、自分のこだわりの正しさを疑うことも必要だ。反対意見を出してくれる人こそ、実は大切な示唆をくれている。でも、こんな風に考えるようになったのは、30代半ばくらい。30代に入るくらいまでは、喧嘩番長だった (笑)。
広津 人によって違うと思うが、自分の場合、20代は職業人としての自分を理解することと、仕事の意味を理解することに使い、ちょっと遅いかもしれないが、仕事が面白くなってきたのは30代になってから。20代は自分も仕事もわからずモヤモヤしていた。長く続けてくることができたのは、30代に入るまで辞めなかったからかもしれない(笑)。
自分を理解するというのは、職業人としての自分は、こういう局面は得意でスイスイできるけれど、こういうときにへこたれる、自分はこういう人だなというのがわかっていたという意味。組織では一人ひとり得意・不得意が違い、お互いのスキルで凸凹が埋まるので、自分一人で頑張らなくても良いのではないかと素直に思い始めたのもそのころだった。 仕事の意味を理解する上でターニングポイントになったのは、20代の後半で経験した1週間のリモデルクラブ店研修。某リモデルクラブ店様の社長の仕事に、1週間毎日同行させて頂いた。施工現場、お客様コンサルの現場、現場調査、他社のセールスとの商談などを近くで見せて頂くうちに、TOTOでの自分の仕事の役割が格段に理解しやすくなり、目の前の霧が晴れた感じになった。
職業人としての自分と、TOTOという会社の役割のふたつが理解できるようになってきたら、それまで抱えていた仕事の“やらされ感”は急激に薄らいでいった。一人ひとり違うので、みんなに同じ経験をしてほしいとは思っていない。でも、自分の強み弱みを理解して受け入れ、仕事の意義がつかめてくると、日々の仕事の面白さがわかるようになったという経験はお伝えしたい。
30代に入ってキャリアアップしてくると、自分が見ていく管轄範囲が広がる。自分一人のために働くわけではなく、組織を作っていく、仕事のプロセスを作っていく仕事も増える。難しい仕事が多くなっていき3-5年かけて作っていくということになり、リアルに自分の中に、短期と中長期という考えができてきた。すぐ成果をだすこと。少しずつ積み重ねること。両方の視点を意識的にもって働く習慣がついた。そこからは、自然な流れで今に至っている。
TOTO株式会社 執行役員 デザイン本部長
造形学部 工芸工業デザイン学科 1992年入社
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