ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラム別冊UD style
これまで公開したホッとワクワク+(プラス)のコラムとスピンオフ情報も。
これまで公開したホッとワクワク+(プラス)のコラムとスピンオフ情報も。
別冊 UD Style04は世界を舞台に活躍を続ける建築家、坂 茂氏へのインタビュー。
坂氏は建築を通した災害支援が評価される一方、世界各国で、
多くの人たちが愛し親しみを寄せる公共施設を数多く手掛けています。
国を問わず愛される理由を、ユニバーサルデザインの視点からお聞きしました。
建築家 坂 茂氏(以降、坂)
インタビュアー:TOTOギャラリー・間 館長 橋田 光明
―――TOTOでは商品そのものだけでなく、商品を取り入れた空間まで意識しながら、老若男女や言語、障がいの有無などを問わず使いこなせるように開発に取り組んできました。坂さんはご自身の手掛けられた建築の中に、どのようにユニバーサルデザインを反映していらっしゃいますか。
―――坂さんは国内外ともに多くの建築を手掛けていらっしゃいます。国によって、建築に求められるユニバーサルデザインにも違いはありますか。
―――なるほど。坂さんの手掛けられた美術館などの施設では、国内外問わず、いずれも行くべき方向が素直に目に入りリラックスして楽しめる。そんな印象があります。 たとえば「大分県立美術館」は、前面の道路が大きく開かれており、気軽に立ち寄ることができる一方で、2階へのアプローチにも自然に目が行きます。来館される方々のさまざまな目的を配慮して、建物内部へのアプローチしやすさを考えていらっしゃいますね。
建築家
坂 茂(ばん しげる)氏1957年東京生まれ。84年クーパー・ユニオン建築学部(アメリカ・ニューヨーク)を卒業。82~83年に磯崎新アトリエに勤務後、85年坂茂建築設計を設立。95年から99年まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コンサルタント、同年にNGO VAN設立。現在、慶応義塾大学環境情報学部特別招聘教授。プリツカー建築賞(2014年)、フランス芸術文化勲章コマンドゥール(14年)、JIA日本建築大賞(16年)など数々の賞を受賞。
(写真:Hiroyuki Hirai)
坂氏の背景にあるのは、間もなく竣工予定の「富士山世界遺産センター」のファサードに使用する木組み。原寸の模型
(写真:大木大輔)
―――建物をめぐる順序も違うのですね。
―――展示を楽しみながら、アスペンにいるというワクワク感が味わえますね。
―――2017年4月、フランス・パリ近郊に完成したばかりの「ラ・セーヌ・ミュジカル」は、約1,150人収容のクラシック音楽専用のホールを中心とした複合施設ですね。セーヌ川の中州・セガン島にある36,500㎡もの施設は、まるで巨大客船のようなスケールと優雅さを感じさせます。この中にあるさまざまな施設を多くの来館者が楽しめるように、やはり、アプローチに工夫があるのではないでしょうか。
完成間近のラ・セーヌ・ミュジカルの様子。設計はShigeru Ban Architects Europe(写真:Nicolas Grosmond)
ラ・セーヌ・ミュジカルの模型を真横から見たところ。窓越しに、外から道が屋内に通じていることがわかる(写真:TOTO)
2018年に完成予定の台南市美術館の外観イメージ。
設計は坂茂建築設計(資料:坂茂建築設計)
台南美術館の模型。外部の階段が変化に富んだ外観をつくる
(写真:TOTO)
―――その一方で、2018年に開館予定の「台南市美術館」(台湾)は、建物外部のあらゆる方向から内部に向かう階段や通路が印象的ですね。
―――それぞれの建物の用途に合わせて、多くの来場者が楽しめる工夫がごく自然に組み込まれているのですね。私もぜひ、ラ・セーヌ・ミュジカルや2018年竣工予定の台南市美術館を訪ねて、建物の美しさとさまざまな人に対応できるアプローチ性の双方を体感したいと思います。
[展覧会情報]
展覧会名:坂 茂
「プロジェクツ・イン・プログレス」会期:2017年4月19日~7月16日会場:TOTOギャラリー・間開館時間:11:00~18:00休館日:月曜入場料:無料