特集1/インタビュー

設計したい

―― この段階では本当につくろうと思っていたんですか。
藤森 それはもうはっきり覚えている。「神長官守矢史料館」をやってものすごく目覚めてしまったんです。といっても設計の注文は入ってこないから、自分ちで考えていた。しかし、この段階ではまだお金のこととか具体的なことはあんまり考えてない。楽しんでたんだと思う。要するに想像力が行き場を失って、自分ちでうろうろ(笑)。
―― このスケッチ7は91年ですね。
藤森 これをやったら絶対、おまえは明治の西洋建築の研究者だからと言われて馬鹿にされておしまいだったでしょ(笑)。だから迷っているときって相当めちゃくちゃなこともやってたんです。ほとんど方向性がないもの(笑)。
―― スケッチ8スケッチ9が92年ですね。
藤森 このへんからまとまっているねえ。この頃は、まだ全然、建築家と思われていない。赤瀬川原平さんの「ニラハウス」が3軒目ですが、彼は神長官を見て興味をもってくれたけれど、あれは住宅じゃないから。タンポポハウスを見て頼んでくれたんですよ。藤森さんて住宅もちゃんとやれるって。スケッチ9なんかねえ、完全に今のですね。
―― スケッチ10は93年と書いてあります。完成に近くなっていますね。スケッチ11スケッチ12で突然変なものが出てきています。暖炉ですね(笑)。
藤森 つくろうと思ったんだね。結局炉になるんですけれどね。こういう暖炉をつくってみたい、いや火がほしいと思ったんでしょうね。
―― 鉄平石への思いもありましたか。
藤森 故郷の材料で、神長官でも使ったしね。鉄平石って火に強いし、タンポポハウスの中は洞窟化してるんですね。
―― ただここでは櫓が見えなくなってしまう。櫓は悩まれましたか。
藤森 じつはタンポポハウスでも櫓はつくれるようにしてあります。今でも時々、考えては楽しんでいる。ただ茶室は面倒かな、と。大きな風呂をつくろうかなとも。食堂の屋上にのせられるスペースが用意してある。4畳半ぐらいの風呂。4畳半の水面をつくって、浅い20㎝ぐらいので、ピチャピチャ……。想像して楽しんでいる。
―― スケッチ13あたりでも鉄平石が出てきますね。
藤森 そうです。おそらくディテールを考え出して壁に草を植えることは無理だというのがわかって、何かのあいだに挟んで植えるしかないってことに至ったんだと思いますよ。だってこのあたりは、ずーっと、鉄平石、土、鉄平石、草になってますもんねえ。
―― そうですね。
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