特集5/エッセイ

藤森さんがあんなに楽しそうな理由

 藤森さんが、どうしていつも、あんなに楽しそうなのかというと、それは「遊んでいるから」ですね。
 藤森さんは、書評をしたり、文章を書いたりして、それはたくさんの人々を楽しませて定評があるけれども、本人は文章を書いたりするのは「とってもイヤだ、気が重い」と、よく洩らしています。
 ひるがえって、設計のアイデアを出しているとき、現場で実際にモノをつくっているときは、ものすごく楽しい、気持ちいいと言ってます。
 現場が好きなのは、その都度臨機応変に、次々に惹起した問題を解決していくことが楽しいということらしい。
 設計はもちろんあるが、すべてが細部まで決定しているワケではない。たとえば、屋根を葺くというような作業を、われわれシロート(縄文建築団とかいうが、つまりシロート集団だ)にさせていて、われわれが処理に困ったりしたとき
「ここはどうするつもり」なのか親方に聞くと、
「決めてない、ガンバっててきとうにやってくれ」という答えである。
 しかたないシロートが、アレコレ考えて、苦心してやっとこなんとかすると、見にきて「ああ、いいじゃない」と明るく言うのだ。
 丸投げというのは、たいがい投げるほうにやる気がないので非難されるのである。が、この場合、丸投げされたほうは、いっしょけんめいになって問題解決をしようとする。その解決能力を引き出すのが、つまり藤森式だ。

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