特集1/インタビュー

ディテールのこだわり

―― スケッチ14で一番興味深いのはディテールです。ニラハウスの茶室っぽい。
藤森 おそらく先ほど木でグジャグジャやるハーフティンバーとか、木のガウディとかいうようなところですね。
―― ワーグナー(Otto Wagner)の「マジョリカハウス」(1899)と書いてありますが。
藤森 「ワーグナーのマジョリカハウスを枯れ木でつくる」って、どういうことだ(笑)。ふーん、マジョリカハウスの外壁には花が構造と関係なく描かれているでしょう。それはおそらくね、木で構造と関係なく表情をつくりたかったということだな。木を、ほら、針金でつないで。マジョリカハウスのあの表現を枯れ木でつくるっていう感じだね。
―― マジョリカハウスの写真をにらんでわれわれは悩みました。
藤森 これとどういう関係だって(笑)。こういうことは書いておかないと忘れちゃうね。
―― スケッチ15のようなのはどうして出てくるのでしょう。庭ですかね。
藤森 塀があって。塀……砦みたい(笑)。ここに描いてある、跳ね橋。やっぱり庭につくろうとしたんだ。最初の砦のイメージをここでもう1回やろうとしている。これは今もやりたいねえ……。おー、いいねえ、これ。離れで茶室にしてたんだ。
―― 跳ね橋は異界ですね。
藤森 そう、お城のイメージとか、跳ね橋はいいですよ。どうして世界の建築家は跳ね橋をやらないのかね。あんなにおもしろいものはない。みんな知ってるのに、聞いたことないでしょ、跳ね橋やった建築家って。
―― そうですね。
藤森 いろいろ考えてはいたんだ。草を壁に植えることを具体的に考え出して、スケッチ16は縦にやったんですよ。
 スケッチ10あたりは点々になっているでしょ。草をどう植えるか、一番苦しんだところです。
 スケッチ16は筋で植えてる、だから相当最後のプランですね。実施設計の内田祥士君と打ち合わせ、コストのチェックをしたって書いてある。プランも決まり、構造も相当決まり、いよいよ仕上げをどうするか。なんとも困ったんじゃないですかね。本当に困ったから。
―― 内田さんはどれぐらいの時間をもらったんですか。
藤森 半年ぐらいあったかなあ。決まらなかったですよ、最後まで。細かいところをどうつくるか決まらなくて、工事が始まって軀体を打ち終わっても、まだ実験していたから。タンポポをどうやって壁に定着させるか。それで、鉄平石を使うことは決めていたような気がします。ステンレスの板をつくって、その上に私がのって作業して大丈夫かなみたいな実験を実物でやった記憶があります。とにかく垂直に植物を植えてうまくいった例はない。
―― 少し角度をつければ。たとえば土手とか。
藤森 土手でもね、草が自然に生えるのは30度ぐらい。30度を超すと、アメリカングリーングラスとか見るのもいやなような草しか生えてくれないんです。
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