特集1/インタビュー

平面は考えない

―― 次のスケッチ3ですが、これは完全に土ですよね。物見櫓もある。
藤森 これが後まで生きてるんです。草が生えてるな。土と木と。一度、草は消えたけれどもう一度出てきたんですよ。
―― ここまでは平面図は描いてないんですね。
藤森 そうですよねえ。そうそう、平面はね、伊東豊雄さんに言われたけど、おまえの平面は平面って言わないって。間取りだって(笑)。今、平面はプログラムって言う。
―― 平面はどうにでもなると思っていますか。
藤森 平面は別にそんなに難しいっていう感じじゃない。というより、難しいことをやろうとしない。
  平面が決定的に意味をもち出したのは、ライト(Frank Lloyd Wright)からですね。平面は、簡単にいうと壁で囲まれてつくられてきたわけですよ。それをライトは日本の建築に学んで取っ払った。彼のプランが、現代まで続くプランの流動性をもたらしたわけです。それが結局バウハウスにつながるんです。具体的にいえばミース(Ludwig Mies van der Rohe)につながる。あの人あたりから平面が重要な要素になってきた。でも僕はそこにあまり興味がない。
  今でも平面は重要です。平面は社会性をもちますから。家族の関係にかかわります。たとえば台所を中心にするとか、座敷をもつとか、あるいは完全に家族の部屋を中心にするとか。今は台所と居間が中心ですが、これは奥さんと子どもですよね。お父さんの存在は薄くなっている。そういう社会性を直接的に反映するのが平面ですね。
  僕はその時代の一般的平面でいいって考えている。
―― 最終プラン(1階平面図)では玄関を入って右手に炉を切った主室がありますね。「居間であり、客間であり、茶室でもある」とあります。客を意識化されていますか。
藤森 いや、主室という考えです。ワンルームでもいいという思いはあるんです。なんでこうしたかな。ワンルームでもいいけれど、僕は座りたいんですよ。おそらく食卓の横で座るとテーブルの底が見えちゃう。室内犬状態(笑)。広い部屋で距離がとれればいいけど。
  ゴロゴロする場所を確保したい。とくに炉が好きです。火があってゴロッとする。僕は小学校2年生まで炉が切ってある板の間で食事をしていました。囲炉裏のまわりで。普通、農家は畳と板の間がゾロですが、ウチは畳は上段の間になっていて、殿さまをお泊めする家だったんですね。そういう経験が平面に出ているのかもしれない。
  そういえば平面図は「前の家に似ている」って家内が言ってた。言われてびっくりした。
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