特集1/インタビュー

1990年元旦スタート

―― 確かにこのスケッチ1の案は、すごく変ですよね(笑)。
藤森 「こじき城」って書いてあるもんね。
―― ここでは見えませんが、「雪舟」「こじき城」「ハーフティンバー」「エコロジー」、4つのキーワードとあります。
藤森 雪舟って書いてあるんだ。忘れてた。雪舟の絵の岩の感じなんだろうな。
―― ハーフティンバーも不思議なんですけれど。
藤森 木を大量に使いたかった。この頃は木のガウディ(Antonio Placido Guillermo Gaudi y Cornet)を考えていたんですよ。木を大量に使うとき、日本の真壁は限界があります。ハーフティンバーっていうのは、ほとんど組積造に近い木の使い方。どれが効いてるかはっきりしない(笑)。ぐじゃぐじゃに入っているのをやりたかった。
  要するに日本の木造については未知の可能性を感じない。日本のすぐれた才能が十分注入されていて、やり尽くされた。木造に興味はあるけれど、もうこれはハーフティンバーでいくしかないんじゃないか、と。今でもその思いは強い。
―― スケッチ1スケッチ2の案は、かなり近い日のようですね。
藤森 ほとんど同じぐらいですね。よく似てるけれど、スケッチ2のほうが建築に近づいている。
―― これは砦っぽいですよね。
藤森 「土」化したいんだね。最初のはあまり土の要素がないなあ。
―― これ、小さく孫悟空が飛んでますね。
藤森 ギャートルズ化している(笑)。
―― 物見櫓がありますね。
藤森 高いところが好きなんですよ。
―― 率直にうかがって、子どものときの木登りのイメージでしょうか。
藤森 そうね、木登りとか陣地をつくるとかね。戦争ごっこみたいなの、砦ごっこみたいなの、そういうイメージじゃないですかねえ。
―― 建築家というのは、そういう本能を抑えている気配がありますよね。
藤森 それはモダニズムが抑えた。モダニズムは個人的体験を嫌いますから。根拠が科学・技術ですから。だからモダニズムは文学なんて許さない。もし、本当のモダニズムが現れたら個人性は意味ないですから。そういう点でいくと、一番純粋なモダニストはグロピウス(Walter Adolph Georg Gropius)ですね。
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