特集4/コラム

語録/五 地下は昏(くら)い

 人類は、昔、穴の中に住んでいた。土の中にいたのである。こう知ったとき、原始住居として、入り口が狭くて中が袋状に広がる空間を思い描いた。でも、本当の原始時代の穴居をフランスはラスコーで見て、まちがいであることを知った。原始時代の人類の実際の穴居は、入り口も広く見晴らしもいいテラスのような半オープンな穴に限られる。袋状の暗い穴の中で人類がなしたのは、ラスコーの洞窟絵画で知られるように、野牛やマンモスの絵をリアルに描くことだった。土中の穴は、精霊たちがそこで生まれ、そこに帰る場だったのである。日本の古代の人々は、自分の魂(精霊)がそこから来てそこへ帰る場のことを冥界(めいかい)と名づけ、そこの暗がりについては昏(くら)いと記した。私はこれまで、住宅に地下室をつくることなど思いもつかなかった。考えたくもない。片方がオープンな洞窟は大好きだが、地下はダメ。

語録/六 畳はヘン

 畳を使ったことはない。ふつうなら畳にするところには、籐ゴザを敷く。畳の面をじっと眺めてみたら誰でもわかるが、なんとも落ち着かない。畳と畳の目地に、布製の縁が1本走ったり、2本走ったり、ないときもある。並び方も、規則のあるようなないような。そうした畳のヘンさに気づき、山田守は自邸の畳の縁をすごく細くし、かつ、どの目地も1本だけ縁が通るように工夫した(写真)が、私はそれを見て、もっとヘンだと思った。おそらく、畳は日本の伝統建築のなかではアンタッチャブル領域に属する。日本の室内空間がその上に展開する基準面のようなもので、碁や将棋でいうと盤面のグリッドにあたり、そこには手をつけてはならない。さわらぬ神にたたりなし。

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