- 川上 僕の場合、最初は心配でした。先生は「焼杉ハウス」のときすでに「神長官」から16年たっていて、大抵のことはやったことあるから心配いらないよと言われました。その後「プランができた。お施主さんを呼んであるから『高過庵(※9)』に来てくれないか」と連絡が来ました。お茶を飲みながらプランを見ていたら、お施主さんは感激して拍手喝采で、一発で決まったんですね。ところが、少しゆっくり考えてみたら、いろいろ納まっていないんですよ、間取りが(笑)。奥さんがこれじゃ暮らせないわと言い出して調整に入りました。でも、フォルムそのものは変わっていなくて、内部のいろんなことには、先生、興味ないから、いいよって言うわけですよ。ただ、僕は突き出したお茶室は心配でしたが、先生は「大丈夫、大丈夫、これでもつよ」と言うんです。確かに大丈夫でした。
かなりまかせてもらったという気はしていますが、叱られたところがあります。僕の仕事は職人さんと一緒にやる。きれいにきれいに仕上げようということでやっていた。それがまったくまちがいだった。
「焼杉ハウス」の食堂・居間の床・壁・天井は大陸張りといって、短い板を張り並べる、おおざっぱなようで細かい仕事なんです。これをきれいにつくらなきゃと思って、大陸張りの目地を、隙をつくらない張り方にしたんです。先生が見に来て、現場では何も言われなかったけれど、夜になって電話が来て「あの洞窟はないよ」と言うんですよ。「洞窟って言ったでしょ」って。