特集3/座談会

結論だけがやってくる

―― かかわり方は大嶋さんの場合には違いがありますか。
大嶋 少しだけ違うかもしれません。私は内田さんの仕事がすでにあったので、そういった意味ですごくやりやすかった。先生は、プランニングについてはだんだん関心がなくなってきた。施主と協同設計者にまかせておけばちゃんとしたものになると見切ってしまわれたという感じですかね。最近の仕事の「チョコレートハウス(※7)」では、3間半×4間の3階建てがドーンとあって、茶室が飛び出して、キッチンが飛び出して、というスケッチがあるんですけれど、間取りがよくわからなかった。「じゃあ、後はお施主さんと話してくれ」と。最終的には全部変えました。ただし、骨格は変わっていません。1階が鉄筋コンクリート造、2、3階が木造、ちゃんと茶室が飛び出して、キッチンが飛び出している。
―― 宿命的に形が決まるのですね。
大嶋 そこに至るまでの過程は、基本的に私でさえ知らないんですよ。それ以前の段階というのは、たまに先生のスケッチが雑誌などで発表されるのを見ますが、うちに来るときには、ある日突然、だいたい夜中にファクスで届くんです。結論だけが来ます。最近は先生のスケッチの数がすごく少なくなっています。
  たとえば茶室の「一夜亭(※8)」。窓はここに開けて、こう引く。そのためには袖壁で引いた跡を隠す。窓の前に炉を切る。こういう木を杭にしてやる。壁は土塗り、屋根は杉皮、でトップライト。プランとテクスチャーと、パネル構法でやろうという構造までファクス1枚にまとめられて来る。後はそれを膨らませたり、微調整をしたりという話。最後までぶれないことが多いですね。
内田 夜中にファクスが来るのは、僕の頃からそうでした。最初は返事をしません。しばらくするとまた来るんです。待っている時間がありましたね。先生は腹を立てていたかもしれないですが(笑)。それで、いろいろ変わったりするけれど、変わらないところもある。やがて変化が小さくなって落ち着いてくる。全体で月単位の時間だったと思います。それを通しで眺めているうちに、このへんかなあと思って、これならこうすればできると思うというものを定規の図面にして返します。
大嶋 私のときにはすでにそういう過程の段階はすべてはしょって、先生が自分のなかで完全に思考を熟成させて、これでいこうという結論だけが来るようになっていましたね。
  ただ、プランニングでひとつ言うと、先生のプランニングは素人ではないから階段とかはきちんと納まっている。問題は水まわり。面積がちっちゃすぎるんですよ。
内田 それは僕も思う。
大嶋 これじゃキッチンは納まらないとか(笑)。逆に言うと、協同設計者の仕事はそういうのを調整していくことなんですよね。水まわりや収納を充実させて大きくしていく。そのために階高を高くしたり、水平方向に延ばしたりして調整される全体のプロポーションということについては、先生はあまり細かくは言わない。
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