特集3/座談会

“追っかけ”が縁で

川上恵一 私の出会いは27年前なんですが、信州がらみです。松本の「旧開智学校」(1876)を重要文化財指定にしてくださった村松貞次郎先生が、後に長野県の近代建築の調査に来られたときに、教え子の藤森先生を連れて来てくださった。藤森先生は路上観察学と重なっていた時代で、あちこち見たり写真を撮ったりしていました。それと同時に、ちょうど長野県の近代建築史誌をやっていらして、松本を案内してくださったんですが、藤森先生は全然違う目線でものを見る。おもしろい人だなあと思っていたら、「神長官」の計画を知らされました。しかも場所は私の家から車で30分くらい。そこから藤森先生の“追っかけ”を始めたんです。東京にはツルツル建築しかないのに、ザラザラ建築をやる人がいて、しかも私の地元で、神さまとともにものをつくっている人だと聞いて驚いたんです。
  それからずいぶんたって、あるとき急に電話がかかってきました。長野に大きな民家があって、それを直すことになったから手伝ってくれないかなと言われました。僕が民家の再生をずっとやっていたからでしょう。その民家の敷地で「半分は僕のワールドをつくるから、後の半分で保存作業をしてよ」と言われたんです。ところがこの建物が延床130坪もある。長年いろいろ手を入れて維持していましたが、お施主さんにとっては重荷だったのか、結局、全部壊してつくり替えることになりました。その流れでお手伝いすることになったのが「焼杉ハウス(※4)」です。所員を泣かせながらお手伝いしました(笑)。
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