一段高くなった土地に駐車したクレーン車から伸びたアームが、茶室にかけたベルトを引っかけ、茶室が水平に持ち上がりはじめると、藤森さんや揚存さん夫妻は足場の上に上って、竹のてっぺんの台座に茶室がのるのを待ち構える。どこか足場の床に隙間があいていたらしく、「みんなが上向いて作業してるときに足場がちゃんとしてないと危ないぞ！」と珍しく藤森さんの険しい声が飛んだ。事故を何よりも心配する藤森さんの気遣いだ。
　微妙な位置を少しずつ調整しながら、ゆっくり降りていく茶室。1列に並んだ竹の上にのせるなんて、見るからに不安定そうだと心配していたが、茶室はあっけなく無事着地。と思ったら、藤森さんが、「あ、糊を忘れた！」と叫んだ。合体する直前に竹のてっぺんに接着剤を塗らねばならなかったらしい。やむなく茶室を再度持ち上げ、接着剤を塗り、再び降ろす。と、「危ない！」と声が。何が起こったのか、下からはよくわからなかったが、後で藤森さんに聞いた話では、土台の木枠の水平がやや狂っていて、接着剤を塗ったから、降ろした瞬間、ヌルッとすべったらしい。不幸中の幸いで、湖側の2辺と反対側の2辺の傾きが逆方向だったため、なんとか茶室は落ちずにすみ、後で下から頑丈にビス留めしたので事なきを得たそうだ。
　 2度目の着地を見届けると、まわりじゅうから拍手が起こった。時すでに午後1時半近く。取材班第1陣は挨拶をする暇もなく、車に飛び乗り、現場を後にした。

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