特集2/ドキュメント

夕方/曇り キーパーソン、リタさん登場

 夕方、このプロジェクトのキーパーソンであるリタさんが現場に到着したので、話を聞いた。コーチさんによれば、大きな美術展のキューレーターとして活躍する一方、さまざまな人々のネットワークをつくり出し、それを束ねるカリスマ性をもった人で、ACCのなかでもリタさんが代表を務める台湾支部はとくにユニークな活動が繰り広げられているという。
  開口一番、リタさんはこう語った。
「このプロジェクトは複雑な条件が絡みあって成立したもので、何か目に見えない力が働いている気がします。みなさんがここまで来てくださったのも、そうした力のおかげではないでしょうか。今日の作業を見てお気づきでしょうが、大切なのは結果ではなく、プロセスを通じ、参加する一人ひとりがいろいろなことを考えることなんです。だから、完成後の茶室を取材するより、つくっている段階を見たほうが100倍意味があると私は思います」
  リタさんが最初に藤森さんの仕事に興味をもったのは、意外にも路上観察の活動だったという。2007年、前年にヴェネチア・ビエンナーレ建築展で開かれた藤森建築と路上観察をテーマにした展示の帰国展が、東京オペラシティアートギャラリーで開催された。この展示に興味をもちながら行けなかったACC台湾のメンバーである馬麗英(マ・リ・イン)さん(通称ティナさん)が、コーチさんに頼んで日本からパンフレットを送ってもらったところ、とてもおもしろいのですぐリタさんに見せたそうだ。
「環境に負担をかける大きな建築物をつくるのではなく、自然にうまくなじむ小さな建物を多くつくっているし、人が見過ごしがちな路上のなにげない地域住民の知恵に注目するといった、ものの見方も、自分に似通った部分があると感じました」とリタさん。

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