特集2/ドキュメント

 なんとか藤森さんと接触したいと考えたリタさんは、コーチさんを通じて働きかけ、台北で講演会を開いてもらったのを皮切りに、徐々に親交を深め、ACC内のお茶を楽しむグループのメンバーと来日し、藤森さん作の「高過庵」や「矩庵」(02)も見学。ぜひ台湾にもみなが活用できる共有の茶室をつくりたいと、場を提供してくれる協力者を探し、2009年夏には藤森さんと一緒に5つの候補地を見てまわったというから、さすが人脈と行動力の人だ。
  リタさんは藤森流茶室の印象をこう振り返る。
「台湾にはお茶を楽しむ空間といえば、大勢が集まれる広いスペースしかないので、まずあの制限された小ささに驚きました。その一方で、これまで体験したことのある日本の伝統的な茶室空間とは違った、新しい感覚、伝統を意識しない自由さも感じましたね」
  コーチさんの補足によると、5つの候補地を視察した藤森さんはまもなく、そのうちの4カ所に建つことを想定した4つの茶室のスケッチを送ってきてくれたそうだ。メンバー一同、これにはずいぶん感激したらしい。湖に浮かぶ茶室はもともと現在の敷地につくられる予定だったが、竹の茶室のほうは別の場所に建てられる計画だったという。が、地盤が悪く、道路に面していて不用心といった悪条件から建設不可能とわかり、范さんの土地にふたつ同時につくろうということになったそうだ。
  気がつけば、もはや日暮れどき。作業を終えた人々が、料理が並んだ厨房前の食卓のまわりに集まってくる。昼食と夕食の用意をしてくれるのも、范さんの家族や知り合いのボランティアの人々。客家の家庭料理は薄味でヘルシー、どれもおいしく食べられた。
  宿に戻っても、部屋にはテレビも電話も時計もなく、シャワーを浴びて寝る以外、することがない。携帯電話もメールアドレスももたない藤森さんですら「台湾に来るとストレスが減る」と言っていたのもわかるなと思いつつ、夜10時前には眠りについた。

>> 4月27日(火)

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