特集2/ドキュメント

 舟のそばには進水のための斜路が湖に向かって掘られている。舟の重量は約500kgで、進水式は5月末とのこと。ちゃんと浮かぶのかと聞くと、一応、図面を造船の専門家にチェックしてもらったが、コンピュータで計算したわけではないし、「浮力がつかないうちに舳先(へさき)から水が入る可能性もあるんだよね」とのお答え。大丈夫なのか?だいたい屋根はまだ骨組みだけしかできておらず、進水式に間に合うのかさえあやしい。
  藤森さんは屋根の銅板張りの見本を建築団の前で実演。込み入った解説は白さんの通訳が不可欠だが、言葉は通じずとも大まかなことは案外通じているようで、エアタッカーなど、藤森語の「プシュプシュ」で通っている。
  一方、竹の茶室のほうは、まだ支柱の竹と本体の茶室が合体しておらず、支柱の足元に置かれた茶室は外壁も屋根も下地材がむき出し。むろん内装も手つかずだ。明後日に茶室をクレーンで吊り上げ、竹の柱の上にのせるそうだが、その前に少なくとも屋根は葺き終わっていないとまずいらしい。6月初旬には竣工式典もあるというが、本当に間に合うのか?
  しかし、当の藤森さんはあわてず騒がず、今度は竹の支柱のチェックへ。支柱はてっきり茶室の四隅を支えるのかと思いきや、5本が1列に並んでいる。微妙に曲がった5本の竹を正面から見ると「入」と「川」の字に見えることから、建築団のみんなでこの茶室を「入川亭(Iri sen tei)」と名づけたという。
  使用しているのは台湾特有の「巨竹」という竹で、各直径は20~25cmほど。かぐや姫が入るとは藤森さんの弁。普通の竹は京都と数寄屋のにおいがするので嫌いだが、これなら使えると思ったそうだ。
  ただし、問題は並べ方で、それぞれがほぼまっすぐだから、見る角度によって重なって2本に見えたり3本に見えたり、妙な遠近感が出て、すっきりしない。「千住の名物、お化け煙突だな」と写真の藤塚さん。藤森さんいわく、「そうそう、それで一直線に並べれば、湖から見ると1本に見えると思いついたんだよ。これを思いつくまではけっこう大変だった」。なるほど、それで横1列というわけか。

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