特集2/ドキュメント

 藤森さん設計の建築現場といえば、施工会社が引き受けたがらない作業を素人の建築好きが趣味で行う「縄文建築団」が活躍することで知られているが、台湾のこの茶室の現場も、大半は素人が施工している。
 台湾版縄文建築団の中心メンバーは、土地の所有者である范さんの弟の范揚存(ファン・ヤン・ツン)さん。スペインでジュエリーデザインを学んだ経験をもつ若きアーティストで、楽器をつくったり、最近では同じくアーティストである妻とコンセプチュアル・アートの立体作品などもつくっている人物。電動工具などの道具類を一式もっているうえ、非常に飲み込みが早い。彼が言葉は通じなくとも藤森さんの思いを即座に理解できる勘とセンスをもちあわせていたことが、今回のプロジェクトを実現に一歩近づけた大きな要因のようだ。
 藤森さんによれば、これまで台湾に「茶室」という、お茶を飲むためだけの独立した建物がつくられたことはないとのこと。台湾茶ブームのなかで、画期的なプロジェクトであることはまちがいないだろう。
 周辺状況がだいたいつかめたところで、「それで今回のふたつの茶室のコンセプトは?」と藤森さんに水を向けると、「あのさあ、そういうのは実物を見てから聞いたほうがいいんじゃないの?」と、さっそく一本とられてしまった。そうでなくても、コンセプト嫌いの藤森さんがいきなり聞いて教えてくれるわけがない。まもなく車は民宿に到着。荷物を置き、すぐ現地に赴くことになった。

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