高断熱高気密住宅のパイオニアとして

 相澤さんが独立したのは22歳のとき。働いていた建設会社の支店が閉鎖になり、勤めつづけるには地元を離れなければならない、となったとき、独立の道を選んだ。もともと父上が水道工事業を営み、周囲にも建設工事に従事する職人が多かったため、小さな頃から「いずれ建設業」と漠然と考えていたという。
  独立後は、水まわりのリフォームなど、小規模な仕事をこなしながら、周囲の人たちの紹介で、1件、また1件と住宅の注文を受け、独立2年目には年間10棟を建てるまでになる。そうして建てた1軒の家で結露の問題にぶつかったことが、大きな転機となった。
  長野にふさわしい、結露しないあたたかい家をつくりたい。その思いから北海道へ飛んで雪国の住宅を猛勉強。外断熱、内断熱、エアサイクルと、さまざまな工法を研究し、実際に長野でも小屋を建て、まったく同じ条件で各工法を比較検討、その結果生み出されたのがボード状の断熱材を使った外断熱のFB(Flat Board)工法だった。これが1988年のこと。研究開発はその後、換気システムを採用したFB(Fresh Basic)工法へ続き、この住宅は「省エネ住宅賞」や㈶建築環境・省エネルギー機構から「国内最高水準気密住宅」の認定を受けるなど、数々の賞を受賞する。その過程で採用した工法やシステムには、全館換気システムや桁上断熱の工法など、現在、全国標準となっているものも数多い。高断熱高気密住宅のパイオニアとして、実践を通して着実に進化を続けたことが、現在の北信商建の基礎を築いたといってもいいのだろう。高機能化は、やがてソーラーシステムを併用したFBS工法などへ、さらに生活熱と太陽熱だけで24時間全館18℃を維持できる「無暖房住宅」へと発展する(2005年)。機械に頼らず、つねに快適な室内空間を得ようとする試みは、すでに完成の域に達している。08年には、より低価格でそれが実現できるよう、住まい手が仕様などを選べるエコハウスシステムを開発、グリーンシードハウスの名前で人気商品となっている。

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