一方、健常者はなかなか気づかないことだが、廊下のコーナー部分の天井をほかより高くしたり、床の仕上げをあえて変えてあるのも、サインのひとつだと岩﨑さん。つまり、床の高さや材質が変わったことで反響音が微妙に変化するため、聴覚が発達した人にとっては十分場所を把握する目安になるという。
 入館者をあっと言わせるにちがいない、ガラスの箱が宙に浮いたように見えるシースルーエレベータも、どこからもよく見えるようにと考えられた結果であり、入り口と出口のドアを別にすることで車いすを回転することなく乗降できるようにするなど、こまやかな配慮は怠りない。さらに、乗り降りするところにある手すりをよく見ると、ほかの場所が木なのに対し、エレベータまわりの手すりのみステンレス。これも、触覚でも場所の違いを感じてもらうためのサインだ。
 日建設計社内のUD研究会の代表も務めるという岩﨑さんいわく、「健常者は情報の80%を目から得ているといわれますが、ここでは目や耳だけに頼らず、手触り、色や温度の変化、香り、季節感、そしてランドスケープなど、あらゆるものが五感で感じられる建物にしたかった」。

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