横浜の住宅街の一角。個人邸の広い芝生庭のなかに、真っ白いキューブが現れる。ふわりと地面に置かれたような約3m四方の姿からは、さながら空の彼方から舞い降りてきたような印象を受ける。地上約90㎝の高さにあけられたスチールドアから中に入る。内部は4畳半ほどのスペースで、天井高は2mほど。壁には窓がなく、アクリルハニカムがはめられた約600㎜角のトップライトから光が射し込み、白い壁と天井にやわらかく反射する。
　設計者の長坂常さんは外部とのかかわりにこだわり、必要なときに外とのつながりを生み出す装置を仕込んだ。屋根部分が開くという仕組みである。壁にはトラック荷台のガルウイング用の油圧ダンパーが取り付けられている。スイッチを入れると、だんだんと屋根が口のように開いていく。屋根のパーツにかけられた特注ハンモックに身を委ねていると、だんだんと外の様子が見えてくる。これまで閉じて見えなかった空が室内へ一気に入り込み、外からの風が心地よく感じられる。
「箱」をもじって「paco」と名づけられたキューブは、もともと長坂さんの事務所に併設されているギャラリーに展示されていた。このプロジェクトは、リノベーション設計・施工を行うルーヴィスの福井信行さんから、長坂さんが相談を受けたことに始まる。1000万円を普通の不動産投資ではなく、新たな可能性にかけてみたいという投資家がいるという。長坂さんと福井さんは販売できる「新しいプレファブのモデル」に挑戦したいと盛り上がり、すぐに構想を練っていった。最初の話があってからわずか約4カ月で完成。相当なスピード感を伴っていたことがうかがえる。

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