特集1/エッセイ

土から生まれ、土に帰る 鈴木昭男ホームページへ

「ほたるかご」と名づけられたこの小屋は丹後にある。
 セルフビルドによって建てられている。
 土を掘り、藁を鋤き込み、寝かせ、こね、ねっとりした泥を育て、2枚の板のあいだに押し込み、突き固め、乾燥させ、建ちあげられた「版築」の小屋だ。
 建築に無縁の人が小人数で小屋を建てるには最適の技術といえるかもしれない。時間と我慢強ささえあれば建てられるベーシックな技術によっている。これこそまさに原型としての小屋の要素だ。
 建てたのは鈴木昭男さんと当時のパートナーのふたり。
 鈴木さんは知る人ぞ知る音楽家。世界的サウンドアーティストといったほうがいいかもしれない。
 版築という技術を採用するに至った理由を聞いた。じつは鈴木さんは名古屋の建築家に師事していたことがある。その折りの知識が役にたったのだろう。
 小屋の目的は創作舞踊家のパートナーのための練習の場だ。
 クローズドな土の壁は高さおよそ2m。彼女が跳んで手を伸ばして届くほどの高さ。斜めに丸太を置きながら組み上げた天井。中央に三角の穴。アクリルが蓋になって、ただひとつの窓となり、そこから光が降ってくる。丸太組みが麦わら細工の「ほたるかご」に似るところからの命名という。小割りの板を屋根として打ち付けるのだけが大変だったという。なにしろ三次曲線のゆがみが出て釘で押さえなくてはならないから。

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