遍路小屋と聞いて思い出すのは、東南アジア一帯で見ることのできる小屋。マレイ語、インドネシア語圏では「バライ」と呼ばれている。村はずれに建てられていて、質素きわまりないまさに小屋そのもの。壁はなく、4本の木の柱が立てられ、屋根が架けられ、床が張られているだけ。格別のことはないけれど、人が寄る手がかりになっている。何が目的でもなく若者が集まったり、村人の夕涼みの場であったり、旅人の一夜の宿であったり。
「四国八十八カ所ヘンロ小屋プロジェクト」の小屋もこのアジア的バライに似ていなくもない。お遍路さんの道々に建てられている。違う点があるとすれば、これが建築家、歌一洋さん個人によって企画デザインされたプロジェクトによるということだ。建てるのはボランティアの人たち。時にはプロの職人さんを雇うこともあるけれど、プロジェクトへの共感者によって建てられている。さまざまな人がさまざまな形で参加できるようになっているのだ。