カウフマン工務店はオーストリアのスイス国境近くの町を拠点としている。その業務内容は木工を基本としつつ、なかなか先進的でユニークだ。一般的な工法による家の設計と施工を行う一方、木造プレファブにも積極的に取り組み、工場組立てのユニットをトレーラーで運び、戸建ての住宅から数階建ての大規模なホテルまでつくりあげている。内装や家具製作も手がけていることからわかるように、木工の技量は緻密で、かつデザイン・センスが洗練されている。無用な飾りがなく、プロポーションが美しい。時に目を疑うほど繊細ですらある。
　1996年に開発されたプレファブの戸建て住宅は「SU-SI」シリーズと命名されている。コンテナ形状の基本ユニットを丸ごとトレーラーに積み、公道を運び現地でセットする。一部2階建て、ピロティ形式、複数ユニット組み合わせなど、さまざまなバリエーションがすでに存在している。
「SU-SI」シリーズから派生して99年に開発されたものが、ここに紹介する「Fred」である。木造プレファブ・ユニット、トレーラー運搬という点は変わらないが、移動性の考え方がまったく異なっている。「SU-SI」のほうは恒久的な設置がもくろまれ、移設はほとんど考慮されていないが、「Fred」のほうは一時的な設置が第一で、移設を前提に設計、製作されている。つまり、可搬性、移動性、仮設性の色合いが段違いに濃い。そのおもな用途は祭り、展示会、市場などのイベント時の仮設の店舗、作業場、オフィスが考えられる。
　その要点はふたつ。

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