「酔拳」のようなデザイナーズホテル モンドリアン ホームページへ

 あのロサンゼルスのモンドリアンが改装をした。デザインはオリジナルのフィリップ・スタルクではなく、ベンジャミン・オルリッツ。例の植木鉢こそ残っていたが、確かにスタルクのあくの強さは消えていて、モーガンズ・ホテル・チェーンらしいソフィスティケートされた品のよさがそこここに充満していた。
 ロスの若きセレブたちが夜な夜なレストランやプールサイドに遅くまで集い、大歓声をあげていてじつににぎやか。その舞台にはうってつけのデザインだ。品がよいとはいえ、ロビーでは光とボイル・カーテン(*1)とミラーやガラスを多用し、クラシック家具をオブジェ化して日常性を打ち砕いて見せている。自由奔放であるから一般のホテルからみるとじつに刺激的。
 それはルームにもおよんでいる。「何だ? これは」を連発することになるからだ。
 ベッドのヘッドボードと同じデザインの巨大なソファ。床から天井まで一本足で立って回転する大きなオブジェのようなテレビ、裏側が赤いミラーになっている。黒い模様のテーブルトップには「手」の形をしたオブジェ。メープル材の床には大きなプラントボックスが鎮座している。入室してすぐのライティグ・デスクの上にはシャンデリアが下がり、左右にはボイル・カーテンを多用して壁や窓は半透明。うねっているところもある。バスルームはシャワーだけ。便器の上はダブルフック……。とまあ、やりたい放題のデザイン。すべてが遊び。きわどいが、かろうじて「塀の上」か。この世界では装飾もアイコンのひとつにすぎないのである。
 このような尖ったホテルは、陳腐化が敵になる。つねに最前線、前衛でなければならないからだ。そうでなくなったとき、たぶん、また改装を余儀なくされるのだろう。これはこれできびしい世界だ。
 一方、元祖スタルクはというと、同じロスに2008年の秋、オープンしたSLSホテル アット ビバリーヒルズ(*2)で気を吐いている。スターウッド・グループ。改装し、すっかり変わったホテルは、まるで家具店か骨董品店の中を歩いているような錯覚に陥る。ホセ・アンドレのプロデュースした楽しいダイニングルーム「バザール」。手術室のようなパニックドアハンドルが並ぶファンクションルーム。エントランスにはロビーからあふれ出したようなソファが外にあったり、プールサイドに額縁付きの姿見が並んでいたりして頭がおかしくなりそうだ。理に落ちたり、経済的・効率重視とは別のものに見えるからか。しかし297ある客室は意外におとなしい。
 中国武術に酒に酔ったような拳法、酔拳(すいけん)というものがある(本当にあるかどうかはわからない)が、ふたつのホテルデザインはそれを思わせる。危なっかしく、酔ったように見えるなかに絶妙な力量が隠されているような気がするのだ。
 ともあれロスに行ったらこのふたつのホテルの改装は見逃せない。決して一般解ではないが、その筋の最前線の姿を確認するためにも……。

*1
voile: 薄織物
*2
SLS HOTEL at Beverly Hills
465 South LA Cienega Blvd., Los Angeles, CA90048
http://www.starwoodhotels.com/

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