こうした広い意味でのユニバーサルデザインは、むろんトイレづくりにも反映されている。飯野さんによれば、トイレに関しては施設の性格上、市の力の入れようもひとかたではなく、事前にさまざまな身体状況の方に意見を聞くなどして要望をまとめ、電動車いすでも入りやすい広さを確保したい、オストメイト対応にしたい、子どもを着替えさせる場所がほしいなど、細かい項目を挙げたそうだ。「すべての要望をひとつのトイレで百パーセント満足させるのは難しいので、求められる機能を分散させ、全体として満たすようにしました」と岩﨑さん。
幸い、トイレは1階に男女トイレと多機能トイレが各1カ所、2階には男女トイレと多機能トイレが各2カ所にあるため、フロアによって多機能トイレの便器とドアの関係や手すりの位置(左右勝手)を変えて、さまざまな身体状況の人にも使いやすくするなど、バリエーションを設けたとのこと。
また、多機能トイレも含め、どのトイレにもトップライト、ハイサイドライト、スリット窓など、できるだけ開口部を設け、自然光を採り入れるよう、工夫した点も見逃せない。
多機能トイレに関しては、着工時に発売されたばかりだったTOTOのパブリックトイレ「RESTROOM ITEM 01(ゼロワン)」をいち早く設置しているが、これは開発時から注目していたという岩﨑さんの推薦で採用にこぎつけたもの。高さ750㎜に統一したライニングを手すり代わりに、水平移動や動作の移行がスムーズにできる点が評価された。
当初は福祉担当者の要望もあり、市では別の車いす対応トイレの採用を検討していたそうだが、「現物を見て説明していただいて、なるほどと思いました。スイッチの大きさやトイレットペーパーの位置など、すべてがよく考えられているし、便器のすぐ横に手洗い器があるのも衛生的ですね。デザインはすばらしすぎるほどで、ごたごたしがちな多機能トイレがすっきり見えます」と飯野さん。今後は多機能トイレをはじめ、美しく快適なトイレを同センター自慢のスペースとしてPRしていきたいとしめくくってくれた。