「コンフォートウエーブシャワー」 2017年5月1日発売予定
中に空気を含む大粒の水で、シャワー浴の常識を変えたTOTOの「エアイン®シャワー」。節水と浴び心地を両立させた画期的な技術に続いて、この5月、まったく新しい発想の技術により、世界水準の新感覚シャワーが生まれます。それが「コンフォートウエーブシャワー」。シャワーの快適さをとことん追求、3つの異なる浴び心地が選べるようになりました。開発に携わった相原豊(ハンドシャワー担当)が、その斬新なアイデアと類まれな浴び心地をご紹介いたします。
TOTO(株)
機器水栓事業部
水栓グローバル事業推進部
水栓グローバル開発グループ
相原 豊
取材・文/村上浩平
写真/山内秀鬼
TOTO(株)
機器水栓事業部
水栓グローバル事業推進部
水栓グローバル開発グループ
相原 豊
快適な浴び心地を実現した「流体制御」の技術
すぐれた浴び心地は、どういった経緯から生まれたのですか。
相原豊TOTOでは以前から感性工学といって、「人の感性に伝わる製品をつくる」ことを研究してきました。そのなかから節水しながら水粒を大きくする「エアイン®シャワー」という技術が生まれたのですね。ただお客さまの声を聞いてみると、「やわらかくて気持ちいい」という方が多い一方、一部で「刺激がものたりない」という方もいらっしゃいました。人の好みはそれぞれ違うので、100点満点とはいかないのですが、より多くのお客さまの「感性」にお応えしたいということで、新しい技術の開発に取り組みました。
どのような技術でしょうか。
相原シャワーの浴び心地が「量感」によってもたらされることはわかっていました。そのためにはまず水滴の粒を大きくしなければなりません。それで「エアイン®シャワー」が生まれたわけですが、その後の研究で水滴が広範囲にあたることも心地よい刺激につながることがわかったのです。
なるほど。
相原そこで今回は、節水しつつ心地よい刺激を生み出す手段として、シャワーヘッドに「流体制御」という技術を採用しました。水の流れのなかに、渦をつくり出し、水の粒をコントロールする技術です。そうすることによって、水の粒を大きくしながら、波状に揺らして広範囲に水滴を出せるようになりました。より刺激のある浴び心地が実現したのです。
ひとつの部品に技術を集約
より多くのお客さまの感性に応えるために、3つのモードがあるのですね。
相原メインの「コンフォートウエーブ」は、たっぷりと量感のある快適な浴び心地で、普段のシャワー浴を想定しています。「ウォームピラー」は国内では新発売なんですが、浴びるだけで身体の芯からあたたまる、いわば浴槽代わりの機能です。「アクティブウエーブ」は、より強い刺激がほしい方向け。朝起きたときの「目覚まし」代わりとしてもいいでしょう。TPOで使い分けていただくというのが基本的な考え方ですが、お客さまの好みや生活スタイルに合わせて、自由に使い分けていただければと思います。
多様な機能がつまっているのに、見た目はすごくシンプルですね。
相原3つのモードの違いをつくり出すために、いくつかのノズルを組み合わせていますが、すっきり見えるようにノズルの配置にこだわりました。浴び心地だけでなく、デザイン性も向上したと自負しています。
節水については、いかがですか。
相原今までの「エアイン®シャワー」が粒ごとに空気をもぐり込ませて節水するのに対し、「コンフォートウエーブシャワー」は、通常のスプレーシャワーと波状にとび出す大粒のシャワーの混合です。つまり全体で水の量を間引くという構造にしました。結果として「エアイン®シャワー」同様の従来比約35%減という節水を実現しています。
これも35%減。まさに技術のかたまりですね。
相原水の流れをコントロールするには高い精度が求められます。従来のシャワーは、各機能ごとに部品をつくるのが一般的ですが、今回はシャワーヘッドの水を噴出する面、このひとつの部品にすべての技術を集約したんです。機能とコストの両立を目指して、金型をいくつもいくつもつくり、ひたすら実験しました。本当に大変でしたね。
かつてない新感覚のウォームピラー
海外で先行発売している「ウォームピラー」が、今回は国内でも新発売されます。
相原濃密な、あたたかいお湯が柱状にゆっくり落ちてきます。頭のてっぺんからひと筋流れてくるだけで、オイルのようにまとわりついて、全身をあたためてくれるんです。実際に浴びていただくと、これまで経験したことのないような感覚で、すごく評判がいいですよ。
いったいどうやってそれを可能にしたんですか。
相原配水管からの水の流れは、スピードにバラツキがあり途切れやすいのですが、その乱れをなくして水流を整え、途切れのない湯の柱がゆっくり流れるようにしたんです。それによって温度変化が最小限になり、身体まで熱いお湯が届くんです。水はねが少なく身体にまとわりつくように流れるので、熱が無駄なく伝わることもポイントです。
これも「流体制御」の技術ですね。
相原シャワーであたたまりたいという方にはぴったりで、赤ちゃんの入浴にも使いやすいですし、入ったり出たりが大変な浴槽の代わりとして、介護の現場にも便利かなと思っています。
国内販売にあたって改良した点はありますか。
相原今回は前回に比べて水量を抑え、節水性を高めています。先行発売した海外の「ウォームピラー」は毎分16ℓくらいだったのですが、今回は10ℓでも、十分あたたまることができるよう調整しました。
世界中をターゲットに
シャワーは世界をターゲットにする商品ですね。
相原海外は、日本に比べて水事情があまりよくありません。そのため節水の法規制がきびしくなっています。日本でもあたりまえになりつつありますが、「節水」はもはやグローバル・スタンダードです。
TOTOの技術が生きるわけですね。
相原それと、とくにアジアは水圧の低い地域が多いんです。ベトナムなどでは家の上にタンクをのせている家が多く、その屋根の高さに応じた水圧しか出ません。水圧が低い環境で刺激を強くするには、通常先端をぎゅっと絞らなければならない。ただそうすると水が出なくなってしまいます。でも今回はとことん設計を見直すことで、水路をまっすぐシンプルにすることができました。それによって抵抗をぐっと減らしたのです。水圧が低くても、必要な水量がきちんと保たれるようになりました。
まっすぐなら抵抗が減りますね。
相原そこに「流体制御」で渦ができる。その渦によって、しっかり刺激のある水流が生まれるわけです。
海外でも評判になりそうですね。
相原画期的な浴び心地と節水性、そして3モード。きっと海外で認めてもらえるはずです。日本でも最近はシャワー浴ですませる人が増えていますが、それが生活文化として根付く、そんなきっかけになってくれるとうれしいですね。
Aihara Yutaka
あいはら・ゆたか/1978年福井県生まれ、神奈川県育ち。2004年に大学院卒業後、同年TOTOに入社し、社内の総合研究所にて、エアイン®シャワーなどの商品を研究。その後、11年より機器水栓事業部にてグローバル商品の開発に携わり、15年より現職。