特集/座談会+ケーススタディ

大規模改修に3つの問題「既存不適格」のハードル

市川 先ほど確認申請の話が出ましたが、現実的にこういう改変が可能なのか。法的な制約にはどのようなものがあるんでしょう。
内藤 おもな課題としては3つありました。ひとつは壁式構造の告示の改正により、許容応力度等計算によって壁梁、基礎梁および杭の補強が必要になること。それからコンクリートの設計基準強度が、現在は通称18ニュートン(Fc≧18N/㎟)となっていますが、当時は通称150キロ、165キロ(Fc=150,165㎏f/㎠)です。ですから確認申請をすると、既存不適格になってしまうんですね。それから今回実験で使用した「後(あと)施工アンカー」について、長期許容応力を負担する部材での使用が認められていないというのが3つ目です。この3点について、国土交通省にお願いして、改善できないか検討してもらっています。
市川 後施工アンカーも認められていないんですか。
大内 短期の許容応力度は認められていて、耐震工事などでは有効扱いなんですが、長期許容応力に耐えうるものとしては評価されていないということですね。
渡辺 その点については、たとえばスラブの打ち直しをするときに、大きくはつって鉄筋を溶接して、と従来の技術でできないことはないんです。法律的にどうやっても解決不可能だということではない。ただしコストがかかります。こういう技術はやはりコストが非常に重要で、後施工アンカーならもっと安価にできる、合理的にできるというところから、認めてもらえないだろうかということです。もちろん耐力が本当に大丈夫かどうかの問題がありますから、実証試験を伴って決めてもらわないといけないことですが。
木下 そういった点も含めて、建築基準法の改正に結びつく可能性はありそうですか。
渡辺 建築基準法については、今回お願いした点ばかりではなくて、ほかにもたくさんの検討事項がありますから、法改正かは別にして検討はずっとやっておられるんですね。そのなかにこの3つを課題として加えていただいたという形ですが、可能性はあると考えています。


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