特集/ケーススタディ

町家再生
箱で耐震補強 箱で空間創造 AN Architects ホームページへ

 大阪府南部、貝塚市の市街地に立つ長屋の改修プロジェクト。平屋の3軒長屋の2軒をつなげ、その中に大小の直方体を詰め込んでいるという。
 関西地方の長屋の改修といえば、宝塚にある宮本佳明設計の「ゼンカイハウス」(1997/「TOTO通信」1998年第4号掲載)が思い浮かぶ。95年の阪神・淡路大震災で全壊の認定を受けた2階建ての木造長屋の改修プロジェクトである。既存の木の軸組に鉄骨を挿入して補強したハイブリッド。異種の線材の唐突な出会いが異様な迫力を生み、なんとしても壊さずに使いつづけたいという所有者兼設計者の強い意志が外部と内部の双方に現れていた。過激という言葉さえ出番を失うほどの極北の過激。
 今回の貝塚の住宅も、図面を見、事前に話を聞く限りにおいてはゼンカイハウスに勝るとも劣らない過激さがあるように思えた。3軒長屋の2軒分をつないで一体化し、間口約10m、奥行き約7mの決して大きくはない平面の中、既存の木の軸組の線状のシステムと並列するように、大小の直方体の箱が6個挿入されている。異常に細い柱・梁の線材に対する剛直な箱のボリューム。線と面、あるいは線とボリュームのハイブリッド。柱列が刻む一定のピッチに対して箱はランダムに、時には壁面線から飛び出して配置されている。
 このあまりに強い対比のありさまからは、室内に漂う強い緊張や軋轢が容易に予測された。ゼンカイハウスは事務所として使用されているからよいが、こちらは日常の住まい。果たして成立しているのか。設計者の概念が先走り、現実が追いついていないのではないか。不安と好奇心が交錯する。

  • 1/4
  • →
  • Drawing
  • Profile
  • Data

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら