特集/座談会

「隙間は日本の街の原理」――藤森

藤森 藤本さんは以前、木立の中から外を見たときの独特の景色の味わいについて話していましたよね。それと、北海道から上京したときに見た東京のブロック塀と電信柱が似ていて好きだったという話。それを聞いてようやく、なるほどそういうことをねらっているのかとなんとなくわかった。確かにブロック塀と電信柱は「街の枝」みたいなもんで、見えるような見えないような内と外の関係だからね。
藤本 そうですね。僕がそのとき言った木というのは、生まれ育った地元にある、森というよりはたいして大きくない藪みたいなところなんですが、東京の街とその藪に共通しているのは、ある程度閉じているんだけれど、でも、どこまでも行けてしまう。守られた感じと広がった感じが融合した状態というんでしょうか。それがすごく快適だと思った。しかも、自分で好き勝手に探索すれば、閉じた状態も開いた状態も選び取れる。そういう幅のある場所がつくれたらいいなと考えています。
藤森 日本の街はヨーロッパみたいな城壁都市と違って、家と道のあいだに変な隙間がある。日本の超高層ビルなんかもアメリカ人が見ると変な感じに見えるらしいよ、すごく間抜けに見えるんだって(笑)。なんでニューヨークの摩天楼みたいに密集していなくて、あいだに変な隙間があるんだと。住宅も民法に従うから、必ずあいだがあるし。
藤本 あの、ビシッと閉じられてない、不思議な抜け感が魅力ですね。
藤森 僕は西沢さんの「森山邸」でも、それを感じましたけれどね。取材の最中に、近所のおばあさんが手押し車を押しながら棟と棟のあいだを横切っていったシーンには感動した(笑)。まわりにはいっさい目もくれず、他人の家の隙間を通っていく。あのおばあさんこそ、「森山邸」のよき理解者ですよ。あれがじつは日本の街の原理であり、建築の原理でもあったんですね。
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