特集/座談会

「外観は、中と外で起こっている関係が表れるもの」――藤本

藤森 外観という問題に対しては、どう考えてますか。
西沢 外観は……藤本さん、そろそろ何か言ってくださいよ(笑)。藤本さんは、まさに「外観がない」というのを目指していますよね。
藤本壮介 僕は藤森さんに初めて会って、「T house」(05/『TOTO通信』2006年春号「原・現代住宅再見」/*3)を見てもらったときに、あれはけっこう室内にフォーカスして、中に関係性をつくろうとしていたこともあったのですが、「外観がないね」と言われて、ちょっとくやしいなと思った(笑)。
藤森 でも、ないよ、あれは(笑)。
藤本 外観というのは何かと考えると、結局、中と外で起こっていることの関係がそのまま表れるものなんじゃないかと思います。だから、そういうふうに建物をつくれば自然と外観もできてくるのではないかと。先日、藤森さんに見ていただいた「house N」(08/『TOTO通信』2009年夏号「現代住宅併走」/*4)も、相当大きい外観ですが、外観のように見せかけて、じつはあいだがスカスカで空が見えたりしている。
西沢 藤本さんの場合は、建築の成り立ちそのものが室内体験にもなるし外観にもなる、というふうなことを目指しているんじゃないですか。
藤本 そうですね、両方をつくる仕組みみたいなことを考えていますね。
藤森 ただ「人間にはなぜ顔があるか」という大問題があるんですよ。それは簡単に言うと、ひと目でわからせるため。それと、顔にはその人の内面が表れるんです。そもそも、顔は基本的に正面から見るようにつくられていて、それは生物学的な人間の欲求なんですよ。だけど、プログラムから考えるようなつくり方をしていくと、どうやって顔ができるのかという問題が起こる。
藤本 たぶん、顔がいくつもあるようにしたいんじゃないかと思いますね。外観はひとつではなく、中で起こっていることの豊かさが表れているようなものにしたい。
 でも、その一方で、わかりやすい外観であってほしいという思いもあります。単に中でいろいろ起こっているから顔がたくさんあるというよりは、ひと目見たときに、中で起こっている豊かさを感じさせるような顔の集合体にしたいなと。
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