特集/インタビュー①

合理性の入り口はたくさんある 吉村靖孝建築設計事務所 ホームページへ

―― 今回の特集では、建築家のみなさんそれぞれの「設計の手がかり」を探りたいと思っています。吉村さんはどのように建築にアプローチしているのでしょうか。
吉村靖孝 自分自身が機能主義的といいますか、合理主義的な判断をする癖があるのは自分でもよくわかっています。ただ、何かひとつのテーマを掘り下げるよりも、パラメータの種類自体を増やしていきたいという気持ちがあります。現在のメインストリームとして、構造が合理的、環境のために合理的な建物とすることがあるように思います。でも、それ以外にもたくさんのテーマがあって、それらと掛け合わせると新しい建築が生まれるはずだと期待しています。
 たとえば継続してかかわっている「NOWHERE」というプロジェクトは、不動産と建築を掛け合わせたもので、「海辺のウィークリー別荘」を提供するものです。利用者と短期間の賃貸契約をすることで不動産の仕組みをチューニングし、建築とぴたりと合うところを探しました。
 また、最近「CCハウス展」という個展を行いました。CCは「クリエイティブ・コモンズ」の略です。音楽の分野などでは著作権管理が行き届いていますが、それを窮屈に思った人たちが、一部は放棄することを明記して、リミックスやサンプリングを行えるように著作権を変えようとしています。コピーライトを守るか、コピーレフトといってすべてを放棄するか、その中間の著作権のあり方を目指すものです。それを建築に利用したらどうなるかという考え方で、住宅に適用しようと思っています。どのようにリミックスして改変してもらってもかまわないという状態で、木造住宅の建築図面を配布・販売する。これは、建築と著作権、または建築とその買い方を掛け合わせようとするものです。
―― うまくいきそうですか。
吉村 選択肢が増えること自体がおもしろいと感じています。住宅にはさまざまなデザインがあるのに、みなが35年ローンを組むようでは暮らしが均質になるような気がして窮屈に思います。図面販売といっても、購入者がセルフビルドでつくることは想定していません。地方の工務店が商品力のある住宅を提供できない現状があるなかで、そうした方面にも訴える力があるだろうと考えています。
 また、コンテナの規格に合わせて住宅のフレームを設計し、海外で製作して輸入するという計画も続けています。住宅の標準化や規格化に抵抗を覚える人もいるでしょう。しかし今の時代、1種類の物が世界中を埋めつくすことはありえないという前提で、服でいえばユニクロという選択肢があるかないかでは大きな違いがあります。すべてユニクロとすることがいいとは思いませんが、ユニクロがあること自体はいいことだと思います。建築でも同じようなことができればいいなと考えています。高級車を買う程度の値段で住宅が手に入れば、そこで起こる暮らしは変化に富んだものになるのではないかという期待があります。
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