キャビンはコンパクト ホームページを見る

「旅のバスルーム」なら船もありだ。ということで今回は北欧のフィンランドやスウェーデン、エストニアなどの主要都市を結ぶバルト海の大型客船。何隻もあるが、これは「ヨーロッパ号」。私はフィンランドの古都トゥルクからスウェーデンのストックホルムまで1泊だけのクルージングをしたが白夜の季節だったので長く感じた。
 この船は全長202m、全幅32m、総トン数は5万9912トン。巡航速度は21.5ノット。デッキは13層もあり、高さがある。乗客用リフトは数えると7基。キャビン(客室)数は1152室、乗客数は3013人、乗用車は340台。船内にはなんでも揃っていて、映画やコンサートができる劇場、5つのレストラン、バーは3つ、ナイトクラブ、ディスコ、パブ、カジノ、タックスフリーの店を含めてショップは4、会議室やサウナ、ビューティサロンもある。つまり街のような超高層複合ホテル建築の横倒しほどのボリューム。日本の大型フェリーにもほぼ同規模のものがあり、エーゲ海やカリブ海にはもっと大きな豪華客船がある。
 大きな船の艤装をしてみるとわかるが、鋼板でできているため全体平面図は建築物のように黒く塗りつぶすところがほとんどない。床も水平とは限らない。仕上げ材は軽くなければならないし、揺れるから家具も固定か固定できることを考えなければならない。法も陸上とは異なる。そもそもインテリアデザインというものは船の艤装から始まったという説があるくらいなのだ。船のインテリアデザインには大きく2種類ある。船舶らしさを前面に出したものと、まるで陸の大きな商業施設のようにデザインしたものである。これは後者。
 乗船するターミナルでは、驚くほど多くの遊び着を着た老若男女で混み合っていた。もう食事をしたりワインを傾けている客もいる。乗船するといつの間にか出航していた。
 海に面した一般キャビンAタイプ。広いとはいえないが人の動きを考えて各所じつによくできている。固定のテーブルの両側には、回転してベッドが出てくるソファベッドと壁付きのジャンピング・ベッド。どちらも820㎜幅だが片側が壁だからか狭さを感じない。この機構がいい。ワードローブは2カ所。ドア同士はもちろん互いにぶつかったりしない。金物がいい。
 バスルームはシャワーで床が10㎜ほど下がってなでつけてあるだけなのだが、ふつうに使っても水があふれない! 洗面カウンターは便器のためにカットしていて反対側の壁に平行ではない。じっくりと20分の1で実測。レターペーパーはレセプションにも備えてなかったが。
 天候が悪く、デッキに出ても霧の中。晴れていれば美しいバルト海のアーキペラゴ(群島)のあいだを静々と進むはずだ。島が突然近くに現れる。これが氷山であればあのタイタニック(*)だ。
 ストックホルムに到着。乗客の下船支度はみな速い。マキシムのような優雅なレストランにいてもササッといなくなる。着岸するとすぐたくさんのワーカーがどっと乗り込んできて短時間でベッドメイクをしたり、食材を運び込んだりする。
 客船の姿を仰ぎ見ると、下船したばかりなのになぜかわくわくしてしまう。あの形は旅情を誘うのだ。

Titanic:1912年4月14日、
総トン数4万6328t の豪華客船タイタニック号は初めての航海中、氷山に接触して沈没。1517人の犠牲者を出した。その後何度も小説や映画となっている。

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