歌さんが言う「祈り」を建築のテーマにしているという心もあるかもしれない。その個人的な思いが四国八十八カ所巡りのお遍路さんの歴史と御大師さまと呼ばれる僧・空海による日本人の心を刺激し、小屋としての形をとっているということだろうか。どこかに人は「お接待」に参加したいという心があり、四国はまさにその伝統や想いを誘う場なのだろう。このなつかしい「お接待」という言葉の響きに誘われてしまう。遠くにいても参加可能なプロジェクトの形。それが四国だけの、地域の人だけのものではない、大きなプロジェクトとして動きはじめている。
歌さんだって驚いている。「最初はひとりでこつこつやろうと思っていたことが、ニュースに流された途端に賛同者が集まった」と。ひとりの建築家がいて、そのプロジェクトの噂が伝わって、小屋が形になっていく。人の心を誘う力を小屋が育てている。「小屋」としての原型を想起させるデザイン、シンプルがゆえの強いメッセージ性がここにあるからといっていいだろうか。かつて四国には「茶堂」というお堂が各地にあったという。その違いは基本的に四方のうち、一面が壁になっていることと教えられた。若衆宿的役割も果たし、遍路小屋的な役割もときに果たしていたと聞いた。
プロジェクト成功のデザイン的ポイントのひとつに、もしかして四本柱で見通しがきくという開放性があるのかもしれない。